【ソウル聯合ニュース】韓国は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が就任してからの1年、「価値の外交」を掲げて米国主導の自由主義陣営との結びつきを強めてきた。米国、日本と連携する一方、権威主義的な北朝鮮と中国、ロシアとの溝はあらわになった。韓米日と朝中ロの対立構図により朝鮮半島を取り巻く情勢が厳しさを増す中、尹大統領の外交は難しいかじ取りを迫られている。

◇韓日関係改善が韓米・韓米日の好循環に

 米中の対立が本格化し始めた2018年以降、両国の覇権争いは幅広い分野に及んでいる。米中のはざまの韓国について、朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大教授(北朝鮮学)は7日までに聯合ニュースの電話取材に対し「どちらか一方の肩を持たず双方とうまく付き合っていく『戦略的曖昧さ』の時期はすでに過ぎた。絶えず選択を迫られる『戦略的明確さ』が要求される時代が来た」との見方を示した。

 また、ロシアのウクライナ侵攻も国際情勢に大きな影響を与えている。

 昨年5月に就任した尹大統領は、ここ数年悪化し続けてきた韓日関係の改善に取り組んだ。韓国政府は今年3月に徴用訴訟問題の解決策を発表。これを契機に尹大統領が同月に日本を訪れ岸田文雄首相と会談し、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化した。

 米国も韓日関係の改善を歓迎した。4月に国賓として訪米した尹大統領はバイデン米大統領と、朝鮮半島情勢を踏まえ拡大抑止強化を明文化した「ワシントン宣言」を採択した。韓米同盟70周年記念の共同声明では、共同の繁栄と安全保障を基盤に韓米日3カ国協力の重要性も強調した。

 尹大統領は韓日関係改善が韓米関係、韓米日関係の好循環につながったと認識している。

 今月7日には岸田氏が韓国を訪問し首脳会談を行う。当初は同月19〜21日に広島市で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)後の訪韓になるとみられていたが、日程が早まった。韓米の結束ムードが影響したとの見方もある。

 G7広島サミットでは韓米日首脳会談も開催される予定だ。北朝鮮の核・ミサイル脅威が高まる中、韓米日は一層の連携強化を申し合わせると予想される。

◇今後の対中・対ロ関係は 専門家「実利も重要」

 近ごろ中国とロシアはそれぞれに韓国への不満を隠そうともしない。尹大統領が4月にロイター通信のインタビューに応じたところ、台湾海峡の緊張に関する発言に中国はけん制のメッセージを発した。同インタビューについてはウクライナ情勢に絡み、ロシアも韓国に反発した。

 これに関し梨花女子大の朴教授は「戦略的明確さを選択したからといって必ずしも中国を排斥するという意味ではない」としながら、「外交的な綱渡りにも原則と一貫性が重要だ」と強調した。

 世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)統一戦略研究室長は「米、日との緊密な関係維持は必要だが、かといって中ロとの関係をおろそかにしてはならない」と指摘。価値の外交の中でも実利を取ることが必要だとした。