【ソウル聯合ニュース】韓国の総選挙で保守系与党「国民の力」が惨敗し、任期3年を残す尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は厳しい政権運営を強いられることになった。この2年間の政権運営に対する国民の評価は冷ややかで、国会で野党が過半数を占める「ねじれ」の解消はおろか、憲法改正をかろうじて阻止する程度の議席獲得にとどまった。難局を打開するためには政権に何らかの変化が必要となりそうだ。

 10日の総選挙の結果を受け、尹大統領は11日、「国民の意思を謙虚に受け止め国政を刷新し、経済と国民の暮らしの安定へ最善を尽くす」と述べた。

 野党に圧倒的な議席数をもたらした民意を前向きに受け入れ、「国政刷新」に努める姿勢を示した。

 まずは人的刷新が行われる見通しだ。この日、内閣からは韓悳洙(ハン・ドクス)首相が、大統領室も秘書室長と政策室長をはじめ、国家安保室を除く首席秘書官級以上の高官全員が尹大統領に辞意を伝えた。どの程度まで受理されるか、実際に大々的な刷新につながるかは尹大統領の決断次第だ。

 大統領室は首席秘書官5人全員を交代してからわずか4カ月余り、韓首相は尹政権発足時の2022年5月から内閣を率いてきたものの内閣改造からはやはり4カ月ほどしかたっておらず、尹大統領は頭を悩ますとみられる。

 また、大統領室高官の説明では、今後は野党と緊密な協力、意思疎通に乗り出すようだ。尹政権の国政課題の多くは法制定を伴うため、国会との協力が欠かせない。これまでも「協治」(協力の政治)には言及してきたが、巨大野党の協力を求めるためにも協治のジェスチャーを強化するほかない。

 尹大統領は革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表と2人きりで会談したことはない。今後は野党との関係づくりがより重要となるだけに、何らかの新しい動きが見られる可能性もある。

 「垂直的なリーダーシップ」「不通(コミュニケーション不足)」と指摘される尹大統領のスタイルに変化があるかも注目される。

 大学医学部の定員増を巡る混乱に対する先の国民向け談話は質疑応答なしに50分にわたり談話を読み上げるだけで、新年にあたっては記者会見の代わりにKBSテレビと対談した。人事への批判や妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る疑惑に対しても消極的、守りの姿勢を示してきた。こうした積み重なりが今回の総選挙惨敗につながったという分析は与野党で共通している。 

 政府と与党の関係も見直しが必要といえる。2年前の保守政権発足後、国民の力が臨時執行部の非常対策委員会を3回構成して仕切り直しを図った裏には大統領室の影響力があった。今回の総選挙の前には一時、韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長とのあつれきから同氏に辞任を求めたとされ、有権者の目には「垂直的なリーダーシップ」に映っただろうと指摘された。