2025/7/22 21:20

異質『ラヴィット!』、2時間イジり倒し神回「振り切ったスゴさ」見せつけた

えんとつ町のプペルAmazon

お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣(45)が手がけた絵本『えんとつ町のプペル』を原作とするミュージカルが8月9日より上演される。2016年に出版された絵本は2020年にアニメ映画化され、来春にはシリーズ第二弾も控えるなか、ミュージカルのチケットはほぼ完売と、息の長いコンテンツとなっている。

そんな『プペル』は今年で出版から10年目。今なお表現の舞台を広げているが、一方で芸人仲間が「プペル」および西野を格好の“イジり”のネタとしてきたのも事実だ。そんな西野に目をつけたのは『ラヴィット!』(TBS系、月~金8時~9時55分)。朝っぱらから2時間西野をイジり倒すという荒業をやってみせた。

 西野は1999年に梶原雄太(44)とキングコングを結成すると、翌年の『NHK上方漫才コンテスト』で最優秀賞を受賞、2001年からレギュラー出演した『はねるのトびら』(フジテレビ系)は歴代最高視聴率24.1%を記録。『M-1グランプリ』では3度ファイナリストになった実力者だ。

 しかし、2016年に放送された『EXD44』(テレビ朝日系)のロケで「芸人が絵本を描くことに違和感がある」と言われたことをキッカケに、その場で“芸人引退”を宣言。ただしこの件については自身で「定義の違い」と解釈している。

「ひな壇に出るのが芸人じゃなくて、みんなが右に行ったら左に行くような、生き方そのものが『話題のネタ』になるようなそういう人が芸人と思っています。そういう意味で芸人でいたいですね」(2016年8月、TOKYO FM『未来授業』)

 肩書にこだわらない生き方を提唱する西野は2021年、吉本興業を退所。その後はオンラインサロンの運営や会社経営などカリスマ実業家となり、著書『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』(幻冬舎/2017年)は17万部のベストセラーである。

さて『ラヴィット!』は7月3日、45歳の誕生日を迎えた西野を呼びつけ、「革命家キンコン西野亮廣お誕生日会!」と銘打ち、ニューヨーク、令和ロマン、石田明(NON STYLE)、板倉俊之(インパルス)ら、西野をもてなしたい芸人が大集合。ニューヨークは8カ月前にプペルの舞台・ハロウィンを祝ったし、令和ロマンはM-1の出番直前に必ず「えんとつ町のプペル」主題歌をカラオケで熱唱するほどのプペル好きを主張。石田は吉本の同期で公私ともに仲が良く、板倉は『はねとび』時代の盟友だ。

 番組ではマント姿の西野の上から「プペル銀行券」を撒き散らし、チヤホヤ全開。これまでの経緯から“イジられ”を自覚する西野は、今回は「NO西野イジり」を出演条件として提示したというが、それこそ盛大なフリ。あの手この手で西野をイジりつつ、ラストは他の曜日のスタッフも全員駆けつけ、「えんとつ町のプペル」を大合唱した。

 まさかの感動のフィナーレに、西野はうっすら目に涙を浮かべる“神回”で、Xでは〈お腹抱えて笑った〉〈西野さんがおもしろすぎる〉などとまるでゴールデン帯のような盛り上がりを見せ、トレンド入りするほどの反響をよんだのだった。

ところで平日朝といえば、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)や『サン!シャイン』(フジテレビ系)のような情報・報道番組がお決まりの“ワイドショー枠”。バラエティに舵を切る『ラヴィット!』は異質だ。2021年の番組開始当初は低視聴率にあえいだが、今や2時間「プペル」もとい西野をイジり倒すという、振り切ったスゴさを見せつけるようになった。

『ラヴィット!』が“異質”な立ち位置で存在感を示す背景を、業界歴30年以上のテレビプロデューサー・鎮目博道氏が分析する。

「TBSもかつてはワイドショーを放送していたのですが、1989年のTBSビデオ事件(※)が原因で、制作部署を解体したという歴史があります。その後始まったのが、芸能・時事問題を一切扱わず、生活情報がメインの帯番組『はなまるマーケット』(1996〜2014年)です」(鎮目氏、以下「」内同)

※TBSのワイドショー制作スタッフが、オウム真理教を批判する坂本堤弁護士のインタビュー映像を放送前にオウム真理教の幹部に見せたことで、弁護士一家が殺害される事態を招いた不祥事。

『はなまるマーケット』は予想以上の人気を博し、17年半も続く長寿番組となった。この成功体験が、現在の『ラヴィット!』につながっているという。

「『はなまるマーケット』は人気だったのですが、TBSはワイドショーに未練があった。ただ『いっぷく!』(2014〜2015)、『ビビット』(2015〜2019)、『グッとラック!』(2019〜2021)と、どれも不発に終わりました。ワイドショーから一度撤退したTBSには、厳しい戦いだったわけです。そこで情報“バラエティ”に舵を切り、誕生したのが『ラヴィット!』。朝からカタい話をするのではなく、“明るい朝番組”をうたって始まりました」

 制作面では吉本興業とタッグを組んだ。MCには麒麟・川島明が起用され、レギュラーにはEXITやぼる塾、ミキといった吉本芸人をメインでキャスティング。その他東京ホテイソンや宮下草薙など他事務所の人気芸人も名を連ね、朝から芸人だらけという異例な体制で放送がスタートした。

生活情報を芸人が扱うスタイルは、初期こそギクシャク感があったものの、途中から方向性を「お笑い」に集約すると、一気に注目度が上昇した。考えてみれば、情報番組のMCとして芸人の起用が定番化しているが、人気芸人だからといってその仕切りがハマるとは言い難い。たとえば早くから打ち切り説が囁かれるハライチMCの『ぽかぽか』(フジテレビ系)のように。

『ラヴィット!』では、芸人が大喜利的な回答を繰り出すクイズが名物コーナー化。同局『水曜日のダウンタウン』とコラボし、あのを遠隔操作して大喜利させるドッキリを生放送中に行った企画も斬新だった。

 鎮目氏は、『ラヴィット!』の魅力として「川島さんのバランス感覚と、田村真子アナウンサーの上手な仕切り」を挙げる。MC陣の安定感が、過激なボケや不適切なイジリに傾くことなく、“朝にちょうどいい”爽快な笑いを届けてくれるというわけだ。今回放送された西野の誕生日会も、まさにその安定感が支えた企画だった。

 ただし同時に、「西野」だからこそ成立した内容だったともいえる。

「視聴者に“弱いものいじめ”という印象を与えてしまうと、コンプラ案件につながることがありますが、西野さんは芸人としてもお笑い界の外でも成功者。芸人たちも西野さんの芸人力であれ、ビジネス力であれ、何かしら認めざるを得ない部分があるのは事実でしょう。本人も芸人スキルが高く、おもしろく返してくれる。なかなかお目にかかれない座組でした」

それでは『ラヴィット!』のように、今後“ワイドショー枠”にバラエティ番組が増えていくかというと、そうでもなさそうだ。

「『ラヴィット!』は吉本全面バックアップなので、他局が同じ路線で制作するのは非現実的かなと思います。また、朝テレビを見ているのは主婦や学生などの若年層が多いので、流行の情報を入れたほうが見てもらえるし、CMも入りやすい。どこまで広告を獲得していけるのかが課題になると思います」

 今年5年目の『ラヴィット!』。ワイドショー枠に革命を起こし続けられるか、とサイゾーオンラインが報じた。

まだまだ「プペル」! 西野亮廣をTBS『ラヴィット』が2時間丸々全力イジりで“神回”化 | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイトまだまだ「プペル」! 西野亮廣をTBS『ラヴィット』が2時間丸々全力イジりで“神回”化 | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト

編集者:いまトピ編集部