伝統を重んじるトラディショナルな服は、正しい知識をもって正しく着ることが大前提。だからこそウンチクを身につけることで日頃の装いや服選びはもっと楽しくなるはずだ。もとは視力矯正器具だったアイウエア=メガネもいまや立派なファッションアイテム。こんなに小さいにも関わらず、デザインやディテールは多種多様だ。そのうち主要な項目を紹介していこう。
2万8600円/エナロイド(GBガファスTEL03-6427-6989)1.基本のレンズシェイプ
玉型(たまがた)とも呼ばれるアイウエアのシェイプ。まずは基本の9型から。
ボストン
真円をやや縦に潰したようなボストンは上品な印象。ヨーロッパではパントゥと呼ばれる。
ウェリントン
英国の名優マイケル・ケインが作中でかけていたことでも有名になったクラシカルな型。
クラウンパント
フレンチヴィンテージに多い形で、上部が一直線状になっている点が最大の特徴。
ボストンウェリントン
その名の通り、ボストンとウェリントンの中間シェイプ。アメトラメガネの象徴でもある。
ティアドロップ
もともとはパイロットが視野を広げるために開発された型。サングラスとも相性抜群。
オーバル
横に伸びた楕円形で、しばらく流行から遠のいていたが、近年再燃の兆しが見られる。
ラウンド
シンプルな真円型でありながら、やや個性的な印象を与えてくれるラウンドシェイプ。
オクタゴン
クセが欲しいときに有用な八角形型。ほかにはヘキサゴンと呼ばれる六角形も頻出。
フォックス
今回紹介するシェイプのなかでは、もっとも装飾性が高く、両端が釣り上がっている。
2.テンプル
耳にかける部分であるテンプルひとつとっても、いくつか種類が存在する。
シューティング
現代ではもっとも一般的なディテール。テンプルを形成する際に溝を掘っておいて、後から機械で芯を打ち込む。
芯張り
クラシカルかつ希少な技法で、2枚の生地で芯を挟む。芯の先端が尖っていない点がシューティングと異なる。
芯無し
アイウエアの素材としてセルロイドが多用されていた時代は、生地が硬かったため芯を入れる必要がなかった。
3.フレームデザインいろいろ
ここではディテールやフレーム自体の特徴によって分類される、デザインの違いを紹介しよう(G.B.ガファスTEL03-6427-6989)。
リムレス
リム(縁)なしの意。レンズを留めるネジの数によってツーポイントとも呼ぶ。3万8500円
ハーフリム
上半分がアセテートやメタルで、下半分はナイロン糸で固定されているもの。2万7500円
ブロウ
フロントの眉部分がプラスチック素材で、それ以外がメタルになっているもの。4万4000円
ツーブリッジ
ブリッジが2本付き、やや癖がある。本来は耐久性向上のための工夫だった。2万4200円
セル巻き
メタルリムにプラスチックを巻く技法で、いまではできる職人はほぼいない。2万3100円
イチヤマ
パッドが付いておらず、ブリッジが直接鼻にかかる、超クラシックな意匠。3万1900円
4.主な素材
素材にも歴史あり。大まかに言うと「プラスチック」と「メタル」に分けられるが、そのなかでもいくつか種類の違いがある。
アセテート
発火性が低く、取り扱いが容易なこともあって、現代では最も一般的なプラスチック素材。タキロン社やマツケリ社が有名。
セルロイド
発火性が高く、火事などの原因となりうるため、徐々に減少していった希少なプラスチック。独特のぬめり感とツヤが特徴。
チタン
メタル素材のアイウエアの大半はチタン。軽くて丈夫で錆びにくく、高い実用性を備えている。また、アレルギーも起きにくい。
サンプラチナ
希少なサンプラチナは、美しい白金の光沢を放つ。製造工程で微量の有毒ガスが発生することもあってチタンに代わられた。
5.ブリッジ
顔の中心に位置するブリッジは、アイウエアのなかでも印象を左右する重要なパーツと言える。
マンレイブリッジ
ブリッジとクリングスが一体化した仕様のこと。鼻周りがすっきりとした印象になる。
キーホールブリッジ
その名のとおり、ブリッジの両サイド下に鍵穴のようなくぼみが見られるものを言う。
6.7枚蝶番
よく見ると、テンプル側とフロント側の蝶番が互い違いに組み合わさっている。この部分が両方合わせて7枚のものをこう呼び、堅牢性が高い。
7.三点鋲
智の部分に打たれた鋲(カシメとも呼ぶ)が3つのものが三点鋲だ。厚い生地のものに多く見られ、クラシックなディテールとされている。
8.抱き蝶
ネジを使わずクリングスとパッドを固定する手法で、飛び出た2本のパーツで、その名の通り抱き抱えるように固定する。高品質なアイウエアの証。
9.サイズ表記
テンプル内側に記載される謎の3つの数字はアイウエアのサイズを表している。
左からレンズ幅、ブリッジ幅、テンプル幅。写真の場合レンズ幅とブリッジ幅を「ヨンゴーニーサン」と読むことも。
※情報は取材当時のものです。
(出典/「2nd 2024年5月号 Vol.204」)
著者:2nd 編集部