輪島塗・蒔絵職人の喜三誠志さんと妻・悦子さん。輪島塗の蒔絵職人・誠志さんが手がけた商品を朝市通りに構えた店で店主・悦子さんが販売していました。

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喜三誠志さん
「残っていたのこの焼き物くらい。このぐらいしか残っていなかったみたいですね。」

喜三悦子さん
「この下は何あるか、ねぇ。見られないので。」

店に並んでいた1000点以上の輪島塗の器は1点も残りませんでした。

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誠志さん
「今やっている途中の商品も壊れたりしていますし、漆なんかひどくこぼれちゃって。もう、どうしようと思いましたよ」


こうした中、舞い込んできたのが金石で出張輪島朝市を開催するという知らせでした。

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喜三誠志さん
「ただ楽しみです。ちょっと今までの生活暗い生活をしていましたのでそこで少しでも楽しいことができればと」

商品をまた販売できると地震後初めて筆を握った誠志さん。漆で絵柄を描いた器の表面に金粉や銀粉をまいて装飾する伝統技法の「蒔絵」。

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喜三誠志さん
「何にも考えないで済むでしょう。これからねどうしようかとか、どうやってやっていこうかとかいろんなことやっぱり考えるじゃないですか。」

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下絵の状態からものの15分でフグが完成。このような可愛らしいデザインから伝統的で繊細なデザインまで。どんな場面にも合う器を丁寧に仕上げます。

喜三誠志さん
「売れる売れないじゃなくてね、いろんなものをみていただいて、楽しんでいってもらえればなぁと思って」


3月22日、出張輪島朝市の前日

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誠志さん
「並びきれないくらい。この日のために頑張って作ってきましたのでね」

質問:オレンジのテント並んでいるの見たらどんなこと思いますか?
「朝市の一部は戻ってきたかなという感覚があります」

迎えた当日

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誠志さん
「ひと月、夜中もずっと頑張ってこれ書いていたの。マグロとか、こういうのとか。カニさん、細かいでしょう」

家に残っていたわずかな漆器と毎日夜遅くまでかけて仕上げた商品がずらりと並びます。

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購入客
「輪島塗のお箸。最初からそれを買いに来てん。だって1番いいのはそれしかないし。使って痛んだらまた新たらしいのをこうやって買えばいい。土産用じゃなくて自分たちのために使います」

質問:もうさっそく売れましたね。

誠志さん
「初、初ですよ。きょう初めて。始まってないと思っていたから今」

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悦子さん
「もうなんか…うれしくて感謝しかないです」

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大阪からはるばる娘夫婦も訪れました。

松本志穂理さん「こんなかわいいの描いたん」

このあとも朝市が終わるまでの4時間の間、客足が途絶えることはありませんでした。

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誠志さん
「疲れました(笑)久しぶりだからね。いやーでも楽しかったんですよ」

商品も店も二人三脚で歩み続けた日常も、全てが一瞬で奪われたあの日から3か月。商いの場を取り戻した2人は朝市の未来を信じて共に歩みを進めます。