3月1日(金)、カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで2024年WEC世界耐久選手権第1戦『カタール1812km』レースの公式予選が行われ、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車ポルシェ963(マット・キャンベル/ミカエル・クリステンセン/フレデリック・マコウィッキ)がポールポジションを獲得した。

 LMGT3クラスでは、トム・ファン・ロンパウ/ルイ・アンドラーデ/チャーリー・イーストウッド組のTFスポーツ81号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rが最速タイムを記録している。

 ハイパーカークラスに新規参入の4マニュファクチャラーを迎え、GTカテゴリーがLMGTEアマからLMGT3に刷新されるなど、新たな黄金期へと突入する2024年のWEC。すでに2月26〜27日にはルサイルで2日間の公式テスト“プロローグ”、続いて29日からはレースウイークのプラクティスが行われてきた。

 2024年、WECは予選方式を一新。2020年からル・マン24時間レースでのみ採用されてきた2ステージ制予選『ハイパーポール』が、すべてのレースで採用される。

 これは、『予選』セッションでトップ10に入った車両が、上位グリッドを決する最終予選『ハイパーポール』へと進出するというもの。『予選』『ハイパーポール』ともに、LMGT3とハイパーカーは時間帯を分けて行われる。すなわち、計4つのセッションを行って全体の決勝スターティンググリッドを決することになる。

■コルベットの小泉洋史は惜しくも一次予選敗退

 現地時間3月1日16時、まずは12分間のLMGT3の予選セッションが開始される。

 9車種/18台が争うこのクラスでは、ブロンズドライバーが予選を担当しなければならない。したがって、TFスポーツの82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rで小泉洋史、アコーディスASPチームの87号車レクサスRC F GT3で木村武史というふたりの日本人ドライバーも出走している。

 陽が傾くなか、セッションは気温21度/路面温度31度というドライコンディションでスタート。78号車レクサスのアーノルド・ロバンを先頭に、各車はアタックへと入っていく。

 まずは81号車コルベットのトム・ファン・ロンパウが1分55秒634という好タイムをマークし、ターゲットとなる。これをDステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージGT3のクレメント・マテウ、そして92号車ポルシェ911 GT3 Rのアレクサンダー・マリキンが、いずれも僅差で塗り替えていく。

 ピットへと戻る車両もあるなか、いくつかの陣営はクーリングラップを挟みつつ2度目のアタックを敢行。するとハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティンを駆るイアン・ジェームスが1分55秒251とコンマ3秒以上全体ベストを縮め、トップに立った。

 これでセッションはチェッカーを迎え、ハイパーポール進出は上位から順に27号車アストンマーティン、92号車ポルシェ、777号車アストンマーティン、81号車コルベット、54号車フェラーリ296 GT3、59号車マクラーレン720S GT3 Evo、85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo2、46号車BMW M4 GT3、95号車マクラーレン、55号車フェラーリの10台となった。

 小泉は惜しくも11番手で敗退、木村も16番手とハイパーポール進出を逃す結果となった。

■新規参戦メーカーが全車ノックアウト

 16時20分に12分間のハイパーカーの予選セッションが始まると、開始3分前からファストレーンに並ぶことを許されたマシンたちが、次々とコースへ雪崩れ込んでいく。トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッドでは、今季新加入のニック・デ・フリースがアタックドライバーを務め、ハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963では、ジェンソン・バトンがステアリングを握った。

 各車は慎重にタイヤに熱を入れていき、6分が経過する頃から最終コーナー手前で前車との間隔を確保しつつ、各車は本格的なアタックへ入っていくと、12号車ポルシェのカラム・アイロットが1分40秒228と暫定首位に立ち、これをデ・フリース、5号車ポルシェのマット・キャンベルが塗り替えていく。キャンベルは1分39秒757と1分39秒台を記録している。

 93号車プジョー9X8のジャン・エリック・ベルニュが3番手に飛び込み、12号車のアイロットは1分38秒714までタイムを縮めて2番手に浮上する。

 残り1分を切り、50号車フェラーリ499Pのアントニオ・フォコが4番手、7号車のデ・フリースは1分39秒台に入れ、2番手へと浮上する。

 そして、チェッカーフラッグが振られるなか最終アタックした2号車キャデラックVシリーズ.Rがポジションを上げたことで、ブレンドン・ハートレーの8号車トヨタはノックアウトとなる。

 予選首位通過は、キャンベルが1分39秒154にまでタイムを縮めた5号車ポルシェ。以下7号車トヨタ、12号車ポルシェ、93号車プジョー、50号車フェラーリ、94号車プジョー、6号車ポルシェ、2号車キャデラック、51号車フェラーリ、38号車ポルシェまでとなった。

 ここで敗退となったのは王者8号車トヨタをはじめ、83号車フェラーリ、99号車ポルシェ、36号車アルピーヌA424、15号車BMW Mハイブリッド V8、20号車BMW、35号車アルピーヌ、63号車ランボルギーニSC63、11号車イソッタ・フラスキーニの8台。新規参戦となる4マニュファクチャラーのマシンは、いずれもハイパーポール進出を逃す結果となった。

■新型コルベットがポールポジション獲得

 続いて16時40分から10分間行われたLMGT3のハイパーポールでは、引き続き各陣営のブロンズドライバーがアタックを行った。

 まずは85号車ランボルギーニのサラ・ボビーが1分55秒721、46号車BMWのアハマド・アル・ハーティが続くが、27号車アストンマーティンのジェームスが1分55秒320と、ふたたび速さを見せて暫定首位に立つ。54号車フェラーリのトーマス・フローも2番手に割り込み。次のラップではさらにタイムを縮めジェームスを上回るが、この2台よりも速いタイムを刻んだのは81号車コルベットのファン・ロンパウだった。彼は1分54秒883、さらに次の周には1分54秒372とタイムを縮める圧巻の走りを披露した。

 セッション終盤には777号車アストンマーティンのマテウが3番手に、さらに92号車ポルシェも2番手に浮上してくるが、ファン・ロンパウの1分54秒台に及ばない。

 このままセッションは終了となり、LMGT3の映えある初ポールはコルベットのファン・ロンパウの手に渡った。2番手以下は92号車ポルシェ、54号車フェラーリとなり、Dステーションの777号車はクラス4番手で予選を終えた。5番手に27号車アストンマーティンが続き、85号車ランボルギーニが6番手となった。

 佐藤万璃音が加わる95号車マクラーレンはジョシュ・ケイギルがアタックしてハイパーポールに進出、8番手で公式予選を終えている。

■ポルシェvsトヨタのタイム更新合戦に

 公式予選最終セッションとなるハイパーカークラスのハイパーポールは、16時58分からの10分間。日没が近づき西陽がかなり低い位置からサーキットを照らすなか、10台の車両がコースインしていく。

 多くの陣営がアウトラップに続き2周のウォームアップラップを挟み、残り4分を切ったあたりからアタックへ。

 まずは6号車ポルシェのケビン・エストーレが1分40秒023で暫定首位に。直後にアタックしていた7号車トヨタのデ・フリースが1分39秒687でこれを塗り替えるが、12号車アイロットが1000分の2秒差で上回り暫定トップへ。

 翌周、5号車ポルシェのキャンベルが1分39秒557をマークして首位に立つと、さらにデ・フリースが2周目のアタックで1分39秒511と塗り替えるという、タイム更新合戦に。アイロットは自己ベストを更新するも、3番手のままとなる。

 17時08分にチェッカーが振られるなか、ラストアタックを敢行した5号車ポルシェのキャンベルが1分39秒347とデ・フリースを上回り、開幕戦から白熱したポールポジション争いはこれで決着した。デ・フリースは最終ラップもアタックを継続したが、自己ベストタイムをわずかに上回れなかった。

 これにより、ポールポジションは、公式テストから速さを見せていた5号車ポルシェの手に。以下7号車トヨタ、12号車ポルシェ、50号車フェラーリ、6号車ポルシェ、93号車プジョー、2号車キャデラック、51号車フェラーリと続く、トップ8の予選結果となった。この8番手までが、首位から1秒以内に入っている。

 決勝レースは3月2日(土)、現地時間11時(日本時間17時)にスタートが切られる予定だ。なお、イベント名の『1812km』は、カタールの建国記念日である12月18日にちなんだものであり、決勝レースは1812kmまたは10時間経過時点でチェッカーを迎えることになっている。