3月2日、WEC世界耐久選手権の2024年第1戦『カタール1812km』レースがカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットでスタートした。1812km、または10時間で争われるこのレースは、レース折り返しとなる5時間を迎えた時点では、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)がリードしている。

 アルピーヌ、BMW、イソッタ・フラスキーニ、ランボルギーニという4マニュファクチャラーを新たに迎えた最高峰ハイパーカークラスでは、王者トヨタら既存のメーカーと合わせて9車種/19台の争いが繰り広げられることになった2024年のWEC。LMP2クラスがル・マン以外では廃止、GTカテゴリーはGT3規格の車両による『LMGT3』クラスへと生まれ変わり9メーカー/18台がエントリーするなど、新たな要素満載の注目のシーズンがスタートした。

 1日に行われた予選では、両クラスで白熱したポールポジション争いが繰り広げられ、新時代の混戦も予感させるなか、決勝日を迎えた。

■スタート直後の1コーナーで混乱も

 現地時間10時54分、ポールポジションを獲得した5号車ポルシェ963のミカエル・クリステンセンを先頭に2周のフォーメーションラップがスタート。ハイパーカークラスでは、ミディアムまたはハードのタイヤコンパウンドを選択できるが、全車がハードを装着している。

 11時にグリーンフラッグを迎えると、50号車フェラーリ499Pのミゲル・モリーナがターン1で大外刈りを決めトップへ浮上。中団以降では接触もあったようで、94号車プジョー9X8がスピンからコースオフ、2号車キャデラックVシリーズ.Rも大きくポジションを落とした。また、2番手スタートだった7号車トヨタGR010ハイブリッドのマイク・コンウェイは、1周目を終えて7番手へとポジションを下げている。

 序盤は50号車フェラーリを先頭に、5号車ポルシェ、93号車プジョー、12号車ポルシェ、38号車ポルシェというオーダーでレースが進行。7号車コンウェイは6号車ポルシェのローレンス・ファントールに抜かれ8番手へ。11番手スタートだった8号車トヨタのセバスチャン・ブエミも、14番手にまでポジションを下げている。

 15分が経過するところで93号車プジョーのニコ・ミューラーが5号車ポルシェのクリステンセンをパス、2番手へ浮上する。さらに30分経過を前に首位フェラーリにも襲いかかり、ターン1〜2でオーバーテイクに成功してトップに立つと、上位勢のルーティンピットが始まる50分経過を前に、ミューラーは2番手以下に約10秒のギャップを築いた。

 最初のルーティンピットではタイヤ交換とドライバー交代の面で各陣営の戦略が分かれたほか、スタート直後の接触でダメージを負っていた2号車キャデラックはフロントカウルの交換も行っている。また、いち早くピットインした50号車はピット入口のホワイトラインカットによりドライブスルーペナルティを受けた。

 2スティント目に入ると首位プジョーの背後に6号車ポルシェのファントールが迫り、テール・トゥ・ノーズに。しばらくこう着状態が続いたが、ターン1でGT車両を抜く際にアウトに膨らんだミューラーの隙をつき、1時間33分経過時点で6号車ポルシェがトップに立った。

 その直後、ターン15立ち上がりで51号車フェラーリ499Pのリヤウイングが脱落。フルコースイエローが導入され、デブリの撤去が行われた。

 6号車が首位を奪った一方、ポールからスタートしたチームメイトの5号車ポルシェはタイヤのバイブレーションに苦しみ、予定よりも早いピットストップを強いられ後退してしまう。

■8号車トヨタはピットでタイムロス

 2回目のルーティンピットが終わるとケビン・エストーレに代わった6号車ポルシェが首位をキープ、カラム・アイロットに代わった12号車ポルシェが2番手となり、ミケル・イェンセンの93号車プジョーは3番手に一時後退するが、その後2番手へと回復している。

 ニック・デ・フリースに交代した7号車トヨタは7番手、ブレンドン・ハートレーが乗り込んだ8号車トヨタは9番手で3スティント目へと入っていくが、2時間30分経過を前に8号車、続いて7号車も首位6号車ポルシェにラップダウンにされてしまう。

 ピットタイミングの関係で7番手へと順位を上げたハートレーは、2号車キャデラックのセバスチャン・ブルデーを背後に封じ込める展開となり、3時間経過を前に2台は同時に3度目のルーティンピットへ。ここで2号車はタイヤを交換しなかったのに対し、8号車は右側2輪を交換したことで、キャデラックが前に出た。

 3時間45分が経過する頃から、上位勢は4度目のルーティンピットへ。2番手を走る93号車はジャン・エリック・ベルニュへ、続いてピットインした首位6号車ポルシェはアンドレ・ロッテラーへドライバー交代を行った。

 このタイミングで7号車トヨタにはチーム代表を兼ねる小林可夢偉が乗り込み、8号車は平川亮がステアリングを握った。

 コースに戻った可夢偉の背後からは、AFコルセ83号車フェラーリ499Pのロバート・シュワルツマンが迫り、ターン1で可夢偉をオーバーテイクする。一方の平川は、50号車フェラーリのアントニオ・フォコを従える格好となった。4時間30分を前に、最終コーナーでフォコは平川をパス、9番手へとポジションを上げている。

 4時間30分が経過するところでデブリ回収のため2度目のフルコースイエローが導入され、短時間で解除となる。この5回目のルーティンピットを前にしたタイミングで、首位6号車ポルシェは93号車プジョーに対し25秒程度のリードを保っていた。その20秒後方の3番手には、12号車ポルシェのノルマン・ナトがつける展開に。

 4時間40分を過ぎたあたりから、上位勢が5回目のピットへと向かう。ここで、タイミングがオフセットしている5号車ポルシェが12号車ポルシェをかわして3番手に浮上。そして平川の8号車トヨタは左リヤタイヤの交換に時間がかかってしまい、15番手にまでポジションを下げた。

 折り返しとなる5時間が経過した時点では6号車ポルシェが首位。以下93号車プジョー、5号車ポルシェ、12号車ポルシェ、83号車フェラーリ、38号車ポルシェ、7号車トヨタ、2号車キャデラックというトップ8になっている。

■LMGT3:前半はマンタイのポルシェ92号車がリード

 3名の日本人ドライバーがレギュラー参戦するLMGT3クラスでは、82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)で小泉洋史、87号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)で木村武史がスタートドライバーを務めた。

 混戦となった序盤、ポールポジションスタートの81号車コルベットは徐々にポジションを下げ、代わって92号車ポルシェ911 GT3 R(マンタイ・ピュアレクシング)アレクサンダー・マリキンが首位、これに日本籍のDステーション・レーシングが走らせる777号車アストンマーティン・バンテージGT3が続く形となる。

 トラブルで予選に出走できなかった77号車フォード・マスタングGT3(プロトン・コンペティション)のシルバードライバー、ザカリー・ロビションが上位まで追い上げを見せるなか、上位勢は50分経過を前に続々と最初のルーティンピットへと向かう。

 2スティント目に入ると、27号車アストンマーティン(ハート・オブ・レーシング)が2番手へと浮上、3スティント目では91号車ポルシェ(マンタイEMA)が2番手にポジションを上げた。

 2時間半過ぎ、ルイ・アンドラーデがドライブする81号車コルベットがピット入口でストップ。駆けつけたメカニックがマシンを押してピット前まで運び、ガレージでの修復に入った。

 3時間が過ぎ、4スティント目になると、Dステーションの777号車が表彰台圏内へと順位を回復してくる。3時間半を経過を前に、チームWRTの46号車BMW M4 GT3には、2輪世界王者のバレンティーノ・ロッシも乗り込み、WECデビューを果たした。

 4時間が経過して各車が5スティント目に突入すると、2〜3番手にはビスタAFコルセの2台のフェラーリ296 GT3がつける展開となり、46号車ロッシは4番手を走行する。

 序盤から首位を走行してきた92号車ポルシェだが、再び乗り込んだブロンズドライバーのマリキンに、27号車アストンマーティンのシルバードライバー、ダニエル・マンチネリが迫る。テール・トゥ・ノーズになったところでデブリ回収のためフルコースイエローとなるが、解除されて程なくすると最終コーナーで難なく攻略、27号車がクラス首位を奪った。

 その後27号車がピットに入ったこともあり、5時間経過時点の途中経過では54号車フェラーリがクラストップに立っている。

 現地は17時37分(日本時間23時37分)に日没を迎える。レースは335周、または10時間のどちらか早い方が経過した時点でチェッカーを迎える。