カナダ人サックスプレイヤーとの逢瀬を楽しみ、ホテルから国会に直行――。自民党の広瀬めぐみ参議院議員(57)の「赤ベンツ不倫」は多くの人を唖然とさせたが、裏の顔はまだある。勤務実態のない“幽霊秘書”を事務所で抱えていた、との疑惑がささやかれているのだ。

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「政倫審」に揺れる自民党で、“性”に関するスキャンダルが相次いで発覚したのはいかなる巡り合わせだろうか。一つは青年局の「セクシー懇親会問題」。そしてもう一つが、本誌(「週刊新潮」)が報じた広瀬氏の「赤ベンツ不倫」だ。

 2022年7月の参院選に岩手選挙区から出馬し、初当選を果たした広瀬氏。夫と2人の子供がおり、弁護士としての顔も持つ彼女の不倫相手はカナダ人サックスプレイヤーである。昨年10月、東京・神宮前のレストランで食事を済ませた二人は、広瀬氏が運転する赤いベンツで歌舞伎町のホテルへ。翌朝、彼女はそのホテルから国会に直行した――。

「広瀬さんの不倫について、永田町では顔をしかめる自民党幹部もいる一方、多くが苦笑い、という感じです。50歳を過ぎていて、女性で、“すごいね”“やるねぇ”と。あまり深刻に受け止めていない印象です」(政治ジャーナリストの青山和弘氏)

「岩手の恥ですよ」

 永田町の住人だけではなく、多くの人を唖然とさせた不倫劇についてご本人が地元・盛岡で釈明したのは、記事が世に出た翌週の今月5日だった。そこで彼女は不倫を認め、自民党岩手県連副会長を辞任したことを明らかにした上で、

「軽率な行動により夫を裏切ることとなり、子供にもつらい思いをさせた」

 などと涙声で語ったのだった。しかし、「公務」を理由に会見は7分ほどで打ち切りに。記者からの質問を振り払うようにその場を後にしたのである。

 今後、「赤ベンツ不倫議員」と後ろ指を指され続けるであろう広瀬氏に対し、

「岩手の恥ですよ」

 地元からはそんな声も聞こえてくる。その岩手で、以前からささやかれている“疑惑”がある。

「彼女も秘書になっていたんですか」と驚きの声

 広瀬氏の公設第一秘書は、岩手県遠野市で不動産業を営む男性が務めている。この男性の妻が公設第二秘書として登録されているものの、秘書としての勤務実態がない“幽霊秘書”だと言われている――。

 柳田国男の『遠野物語』で知られる岩手県遠野市。その周辺でささやかれる“幽霊秘書疑惑”。本誌がこの情報に触れたのは昨年初夏のことだった。当時、参議院で秘書の「現況届」を確認したところ、確かに不動産業の男性が公設第一秘書として、その妻が公設第二秘書として届け出られていた。公設第一秘書の男性に関しては兼職届も出されており、彼が代表理事を務める一般社団法人の名と共に年収360万円と記されていた。

 公設第二秘書として登録されていた女性に勤務実態はあったのか否か。当時、広瀬氏の地元事務所の関係者に聞いたところ、

「え? 彼女も秘書になっていたんですか。それは私、初めて聞きましたね。あんまりお見かけしたことはないです。有権者回りなんかで運転手として駆り出されることはあったみたいですけど、少なくとも平日、事務所では見たことがありません」

 そう驚いていたのだった。

「彼女の夫は元々自民党の熱心な支援者だったのです。それで市長選なども自主的に手伝っていて、広瀬の選挙もバックアップして、そのまま秘書になったような流れです。その彼が広瀬の公設第一秘書になってからは、奥さんに不動産業を任せていると聞いていたのですが……」(同)

「彼女が秘書をやっていたことは全く知らない」

 彼女に秘書としての勤務実態がなかったとすると、気になるのは彼女に支払われる給与の行方である。例えば辻元清美参議院議員は、代議士だった02年当時、勤務実態がない政策秘書の給与を詐取していたことが本誌報道で明らかになり、翌年に逮捕。04年に有罪判決が下っている。

 広瀬氏の“幽霊秘書”も、この事件と同様の構図なのか――。本誌は広瀬氏の地元で取材を続けたが、公設第二秘書の給与の行方を突き止めることはかなわず、記事化を見送った。するとその後、『遠野物語』もかくやという奇怪なできごとが起こった。参議院で広瀬氏の秘書の「現況届」を再度確認すると、“幽霊秘書”の名前が消え、昨年9月から別の人物が公設第二秘書として採用、登録されていたのだ。

 無論、昨年初夏の時点での「現況届」に“幽霊秘書”の名があったのは夢でも幻でもない。今回、改めてその秘書について取材すると、別の地元事務所関係者はやはり、

「彼女が秘書をやっていたことは全く知らない」

 と証言するし、彼女の実家の近隣住民も、

「政治家の秘書をやってたなんて初めて聞いた」

 と、話すのである。

「リモートで…」

 問題の“幽霊秘書”本人は何と答えるか。遠野市にある件の不動産業事務所に彼女を訪ねた。

――広瀬議員の秘書をいつ頃からやっていた?

「22年の12月から昨年8月までです」

――秘書の給与はご自身で全額受け取っていた?

「はいもちろん」

――秘書業務としてはどのようなことを?

「平日はリモートで事務職のほうを。あと、先生の運転手も何回か。土日は盛岡事務所のほうに行って、事務所番などさせていただきました。平日でも盛岡事務所のほうでお休みの方がいれば私が代わりに入ったり」

――秘書業務と不動産業は兼業のような形で?

「そうですね」

――例えば、1週間の中でどれくらい秘書業をやってどれくらい不動産業をやっていた?

「ちょっと私の口からはもうお答えできないので」

 ちなみに、彼女の「兼職届」は参議院に出されていなかった。それについて彼女の夫でもある広瀬氏の公設第一秘書に聞くと、

「(妻の)兼業については広瀬も知っていました。(兼職届が)確認できないということであれば、もしかしたら届け出に不備があったかもしれないです。もちろん勤務実態はあります」

広瀬氏に聞くと…

 夫婦ともども「勤務実態はあった」と口をそろえるのである。広瀬氏本人にも話を聞くため今月上旬の夜、自宅を訪ねると、駐車場にはあの赤いベンツが。ラフな格好でスーパーの買い物袋を提げ、歩いて帰宅した彼女に“幽霊秘書”の勤務実態について問うと、

「さまざまな形で働いていました」

 その後、文書でもこう回答した。

「『実質的な勤務実態がない』などということはありえませんし、まして『幽霊秘書』などではありません」

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が苦言を呈す。

「公設秘書の給与はもちろん公金が原資です。それが十分に秘書業務をやっていない人物に支払われていたのが事実ならば、有権者の信頼を裏切ることにもなりかねません」

「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載