目指す味があるから自分でやる、近年増えているマイクロロースタリー。焙煎機の規模はそこまで大きなものじゃない、小ロット焙煎量ながらもインディペンデントに活動をする店舗。府中にある小さな珈琲店「珈琲焙煎舎」は、開業当初から手網焙煎にこだわる数少ない店舗だ。手網1本から始まり今年で13年目。今では店主である飯島さんの力強いコーヒーの味を求め、手網焙煎が好きなコーヒー好きたちが遠方からも訪れる。

風味の幅は個性。それは手網にしか出せない。

厨房で日々手網を振る店主の飯島さん。焙煎機なら1度で済んでしまう量も、回数をこなさなくてはならない作業は大変だが、これでしかできない味がある

「実は、手網のこだわりというよりは、開業資金がなくやむを得ず手網を選んだんですよ」と教えてくれた飯島さん。とはいえ、次第に手網ならではの豆の活かし方、味わいの魅力に気づかされていく。

「よく手網は味にばらつきがあると言われますよね。人間の手でやっていますから、当然のことです。でも、たとえば同じ中深煎りの範囲の中でばらつきがあるのは、それは味の幅、個性だととらえています。それは機械には出せない風味だと思うんです」

炙りながら手網を振っていくシンプルな作業だが、上達するには地道に回数を重ねるしかないと飯島さん

味の微妙な幅は、豆の個性。1杯のコーヒーで様々な味わいが楽しめるということだ。それではダメだという考えがある一方で、面白いといってくれる人の多いがゆえ、遠方から飯島さんの手網を求めてやってくる。

ドリップバッグもあり。手網と機械焙煎でデザインが異なる

「焙煎を教えてほしいという方には、自分の知る限りのことはすべてオープンにお話ししています。ただ手網の技術は、どれだけ量をこなしたかの経験値。豆と網が当たる感触や重さ……感覚を人に伝えるのは難しいんです」

そう悩みながらも「最近は手網に興味を持ってくれる人が多くなりました。嬉しいですね。世の中ブーム? いやウチに来ている方が手網好きなだけなのかもしれないですけど(笑)」

焙煎「舎」と名付けたのは、飯島さんにとっても学び舎でありたいと願いを込めて アーティスト、そうまこうへい氏のアートワークが飾られる店内 シングルは少ないが、ブレンドの2種類を加えた12〜3種類は常備 ネコの写真やオブジェがそこここにあるのは飯島さんが生粋のネコ派がゆえ 近年は手網だけでなく小さな焙煎機も取り入れた。「機械で煎るとまっすぐな味になります。手網との違いを楽しんでほしくて」

人気のコーヒー豆を紹介!

[豆の種類]
シングルオリジン 2種類
ブレンド 2種類
不定期開催イベントではオリジナルブレンドも。その他、常時7〜8種類

[抽出方法]
ペーパー

[焙煎機]
富士ローヤル 煎っ太郎/直火/500g釜

【シングルオリジン】モンテクリスト農園

徹底した自然栽培にこだわった100%ブルボン種。やや深めに焙煎することで苦味と甘味を最大限に引き出し、はなやかだがバランスのとれた味わいに仕上げた。

産地:ニカラグア
焙煎:中深煎り
精製方法:ウォッシュト
香り:控えめ
酸味:ほとんどなし
コク:バランス型
後味:長く続く

【DATA】
手網焙煎 珈琲焙煎舎(テアミバイセン コーヒーバイセンシャ)
住所:東京都府中市美好町2-17-10
連絡先:TEL042-319-8684
営業時間:13:00〜20:00
定休日:毎週水曜日
駐車場:なし
公式HP:http://coffee-baisensya.jp/
SNS:X@coffeebaisensya、Instagram@coffeebaisensya
席数:6〜8席
ホールセール:なし
豆販売:あり
豆通販:あり
テイクアウト:あり
デカフェ:なし
ドリップバッグ:あり
セミナー:なし
器具販売:なし

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.215「東京コーヒーロースターズ」)

著者:Lightning 編集部