見せるだけのショーカーは、申し訳ないがLightning本誌では扱わない。Lightningの基本理念は「公道であれ、サーキットであれ、走行できるもの」だ。ここで紹介するカローラ―スポーツ(AE86の輸出仕様)は、一見すると走行不能なショーカーに見える。しかし驚くことなかれ! この個体はナンバーを装着し、日常使いも難なくこなしているのである。

美しさに磨きをかけたアメリカ帰りの帰国子女。

赤いボディカラーにホワイトのエンジンルームが目立つ。まるで浮いているようにマウントされるエンジンが美しい

日本国内ではデビュー当時には若者の乗るスポーツカーとして、そして現在では数少ないFRのコンパクトスポーツとして、人気を博しているトヨタのカローラレビンと、スプリンタートレノ。「AE86」という車両型式がそのままポピュラーな呼称となった初のモデルとしても有名な車両だ。今でも多くのファンが存在し、現役のレース車両として活躍している車両も少なくない。

そんなAE86は、北米にも輸出された。国内では販売チャンネルの違いからレビンとトレノという兄弟車が存在したが、アメリカではカローラスポーツとして2ドアと3ドアが販売された。いずれも規格型ヘッドライトを採用する必要から、トレノ同様のリトラクタブルヘッドライトが採用された。グレードは日本と同じ4A–Gを搭載するGT–Sと、シングルカムの4A–Cを搭載したSR–5の二種類。これに加えて日本のAE85にあたるDXが存在する。

真っ赤なボディにBBSエアロディスクのゴールドがマッチ。ボディサイドのストライプが貼られるのは、北米仕様の前期GT-Sモデルのみの特徴

ここに紹介する車両は、元々北米に輸出されたSR–5をベースに、トップグレードのGT–S仕様を再現した一台だ。オーナーであり、ビルダーでもある森さんが今から11年前に購入し、6年の歳月を費やしてコツコツ仕上げ、2019年に完成した外装は北米仕様独特のサイドマーカーや大型バンパー、ラジオアンテナなどが特徴的だが、見えない部分にも徹底して手が入れられている。まさに究極のハチロクというべき車両だ。

ハチロク好きやハチロク乗りなら、このリアビューに違和感を感じるはず。キャンバーがついたリア周りはハチロクではありえない光景だからだ

まずはエンジン。フロントフードを開けると、明るいホワイトで塗装されたエンジンルームに、まるで浮かぶように搭載された美しいエンジンが目に入る。本来4A‐Cが搭載されるが、この車両は、後のAE101などに搭載される5バルブ4A–Gを搭載する。これに合わせてAE101用の4連スロットルを装着。ステンレスでワンオフ製作したエキマニも美しい。

エンジンルームは不要な穴などがすべて埋められ、配管や配線が徹底して隠されている。これはアメリカのショーカーで「シェイヴドベイ」や「ワイヤータック」と呼ばれるもの。見た目以上に大変な作業である。

続けてリア周りを見ると、リジッドアクセルであるハチロクにも関わらず、リアタイヤにキャンバー角が付いていることに気がつく。実はこの車両は、リア周りをAA63カリーナのセミトレーリング式サスペンションをメンバーごとに移植しているのだ。これに合わせてメンバーの取り付け面を上方に移動することで、適切なジオメトリーのまま、車高を下げることに成功しているのだ。

ちなみに前後ともにエアサスを装着することで車高調整も可能。合わせてガレージ34にて公認車検を取得。堂々と公道を走ることができる大人のカスタムとなっている。

ヘッドライトは国内のトレノ同様リトラクタブル式を採用。側面のウインカーは北米仕様専用品 鏡面にワーニングが入る平面鏡ミラーも北米仕様の特徴 北米仕様ではほとんどの車両にサンルーフが装着されている マフラーは森さんの好みでレムスを装備 5. テールは後期レビンと同じもの。サイドマーカーは独立してフェンダーに サードストップランプは北米専用品

1986 COROLA SPORTS|美しきハチロクはストリートを走る。

エンジンは5バルブ4A-Gをベースに美しくディテールアップ。配線などはすべてエンジン下に隠されるほか、インジェクターの配線&配管部分にはアルミ製カバーでヒドゥン。補器類を含めてモノトーンでコーディネイト。

4連スロットルのファンネルは、かなり長いタイプを装着する。実はこのチョイスはマスターシリンダー等に干渉しない左ハンドルだけの特権。

ブースターレスとしたマスターシリンダーは、配管がフェンダー側に出る日産シルビア用を流用。そのままフェンダー内を通って各ブレーキへ。

ワイパーモーターはあえてシェイヴせず黒で塗装し、配線を隠して装着している。

リア周りはメンバーごとAA63カリーナから移植して独立懸架に。メンバー取り付け面を上方に移動することで、サスペンションに無理なく車高を下げている。マフラーはクリアランス確保のために、下面をフラットに。

フロントはロワアームを加工し、ビッグキャリパーを装着。写真では見えにくいが、前後ともにストラット式のエアサスペンションを装着。

エアサスの操作はシンプルな有線リモコンで行う。

左ハンドルの車内には、ロールバーが張り巡らされる。ステアリングはMOMOのMOD.07をチョイス。スピードメーターはkm/h併記のMPH表示。タコメ ーターのレッドゾーンはSR-5用なので6000rpmからとなる。

シートはレカロSR-3を装着。リアシートは外されているが、鉄板剥き出しではなく、カーペットが敷かれる。

センターコンソールのオーディオユニット下には、左から水温、油温、油圧のDefi製各ゲージがワンオフのパネルに装着される。

ホイールは懐かしいエアロディスクを装着したBBSのRSで、リバレルによってフロント、リアともに16×9Jに195/40-16タイヤの組み合わせ。合わせてエアサスも装着する。

【SPEC】
●エンジン形式:4A-G型(直列4気筒DOHC20バルブ) ●総排気量:1600cc ●サスペンション:ストラット式エアサス ●ホイール:BBS RS(F&R)16×9J ●タイヤ:(F&R)195/40-16 ●ブレーキ:(F)ベンチレーテッドディスク+対向6ポットキャリパー(R)ディスク

※情報は取材当時のものです。

(出典/別冊Lightning Vol.231「VINTAGE AUTO 快適旧車のススメ。」)

著者:Lightning 編集部