印象がガラっと変わった、にしおかすみこ

 3月16日放送の「ウェークアップ」(日本テレビ系)で久々に姿を見せて話題となったお笑い芸人のにしおかすみこ(49)。名前を紹介されると、「にしおか〜、すみこだよ〜。ああーーっ!」と自己紹介ネタを全力で披露。直後に「2007年くらいにはやった一発屋です。すみません」と低姿勢モードに切り替わり、スタジオからは笑いが起きた。久々に彼女を見たという視聴者も多かったようで、X(旧Twitter)では「にしおかすみこ」がトレンド入りするほどだった。

 ボンテージ姿で手にムチを持った「SM女王様キャラ」として、2007年に大ブレークを果たしたにしおか。お笑い番組「エンタの神様」(日本テレビ系)や「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)などに出演し、お茶の間の人気者となった。あれから17年。一発屋と言われた彼女は今、自身の家族を題材にしたエッセーを執筆し話題となっている。そのタイトルは「ポンコツ一家」。いったいどういう意味なのか。

「連載の第1回の書き出しが『家族紹介。うちは、母80歳認知症。姉47歳ダウン症。父81歳酔っ払い。ついでに私は元SM女王様キャラの一発屋の女芸人、45歳独身、行き遅れ。全員ポンコツである』と、非常にインパクトのある言葉で始まり、読者に衝撃を与えました。しかし、連載を読むと、それぞれが一生懸命生きており、誰もポンコツなわけではなく、にしおかさんは愛情を込めて、自分も含めた家族を『ポンコツ』と呼んでいることがわかります」(女性週刊誌の記者)

2016年、渋谷・表参道で行われたラン大会に出場した際のにしおかすみこ(左)。右は元AKBの秋元才加( 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

■マラソンは3時間5分台で走破

 にしおかが家族と同居するようになったのは20年のコロナ禍。仕事がゼロとなり家賃が払えなくなって、引っ越しを決断し、荷造りまで済ませていたという。そんな折、ふと実家が気になり、1年ぶりに様子を見に行くと家は悪臭が漂い、床は生ごみや砂でジャリジャリになっていたという。

「想像していなかった母の認知症という現実に直面することになり、家族との同居を決めたとつづっています。シビアな現実が描かれているのに、にしおかさんの前向きさとユーモアあふれる文章で、思わずクスッと笑ってしまうところもあり、文才を感じます。連載を掲載した女性誌のWEBサイトでは、第1回目がなんと1200万回も読まれたそうです。連載をまとめた書籍も好意的なレビューが多く、介護に悩む同年代の女性から支持されています」(同)

 ブレークのきっかけとなったSMキャラを封印したのは2008年ごろのこと。以降、落語スタイルのネタをするようになったがテレビ露出は激減。地方のローカル番組に細々と出演する程度で、多くの人からその存在は忘れられていた。

「近年は、本業よりも意外な才能がクローズアップされました。実は運動神経が抜群で、潜水は88mの記録を持ち、2017年には日本代表に選ばれ世界大会に出場したほど。また趣味のマラソンでは、2019年に3時間05分03秒の好タイムを記録し、ニュースになったこともありました。さらに調理免許を持っていて料理も得意。コロナ禍で始めたという果物や野菜を彫刻するベジタブルカービングの腕前もプロ級で、自身のインスタグラムやブログにたびたびアップしています。年始にアップしたニンジンで作った龍のカービングは躍動感がすごくて、コメント欄には『どんだけ芸を持っておられるのか』など感嘆する声が多く寄せられていました」(テレビ情報誌の編集者)

柔らかい印象になった、にしおかすみこ

■明石家さんまにツッコまれ泣いた過去も

 一方、冒頭の「ウェークアップ」出演時は、彼女の雰囲気の変化にも注目が集まった。ブレーク時は前髪パッツンの黒髪ロングヘアが印象的だったが、明るい茶色のショートカットになり、やわらかくやさしい雰囲気に印象が激変していたからだ。

「にしおかさんは情報番組などでリポーターをしているのですが、女王様キャラとは真逆で物腰がやわらかく、声も高くてかわいらしいんです。ダウン症の方を取材する番組では、取材対象者にやさしい口調で目線を合わせて話をしている姿がすごく印象的でしたね。言葉の選び方などからも、地頭の良さがにじみ出ています。介護というやや重いテーマに明るく向き合おうとする彼女には、同世代や同じ悩みを持つ人たちからエールも多いですし、やわらかい雰囲気や美貌が注目され、以前とは違った形で再ブレークする可能性も少なくないのでは」(同)

 お笑い評論家のラリー遠田氏はにしおかについてこう述べる。

「にしおかさんがテレビに出始めた頃は、ネタの中で演じているSMの女王様キャラのイメージが強かったのですが、その後、バラエティー番組に出るようになると、芸人らしい当意即妙の受け答えができない“ポンコツ”な一面が出てくるようになりました。『FNS27時間テレビ』の企画で、明石家さんまさんに厳しく問い詰められて、何も言い返せずに泣きだしてしまったことも話題になりました。でも、そんな彼女がエッセー執筆をきっかけにして再評価されています。文章の中では自虐的なユーモアのセンスも光っています。ご本人の言葉や文章からにじみ出る人柄の良さや明るさが、好印象を持たれているのでしょう」

 家族の苦労もポジティブに変換し、多才なうえに雰囲気もよく“女子力”も高い。第2のステージに入った「にしおかすみこ」が再びブレークする日は遠くなさそうだ。

(高梨歩)