テーラーメイドの高慣性モーメントモデルとして新登場した「Qi10 MAX ドライバー」と、その前作にあたる「ステルス2 HD ドライバー」をゴルフライターの鶴原弘高が試打比較しました。買うべきなのは最新作? それともお買い得になっている前作を買ったほうがお得?

同じ“やさしいモデル”のカテゴリーだが、見た目がガラッと変わった

 2月の発売以降、「Qi10 MAX ドライバー」は好調なセールスを記録しています。上下左右の慣性モーメントが1万を超えるヘッド設計となっていて、曲げずに飛ばしやすいところが人気の理由になっているようです。

手前が「Qi10」シリーズ、奥が「ステルス2」シリーズ
手前が「Qi10」シリーズ、奥が「ステルス2」シリーズ

 テーラーメイドは2023年の前シリーズで「ステルス2 HD ドライバー」をリリースしていて、こちらもやさしいモデルとして売り出していました。今では型落ちモデルということになりますが、まだ新品が購入できますし、価格はかなり安くなっています。

 最新作と前作との性能差があまりないのなら、価格的なことを考えて前作を買おうと思う人もいるはずです。そこであらためて2つのモデルを打ち比べ、性能差を検証しました。

左が「Qi10 MAX」、右が「ステルス2 HD」。投影面積、シェイプともにかなり違うのが分かる
左が「Qi10 MAX」、右が「ステルス2 HD」。投影面積、シェイプともにかなり違うのが分かる

 テーラーメイドのラインナップのなかでは、新旧どちらも“やさしいモデル”という立ち位置です。ですが、「Qi10 MAX」と「ステルス2 HD」ではヘッドの見た目からしてまったく異なります。「ステルス2 HD」は、シリーズの兄弟モデルと同様に洋ナシ型のヘッド形状。それに対して、最新作の「Qi10 MAX」は丸形のヘッドシェイプになっていて、ヘッドの投影面積もかなり大きいです。

 共通点として挙げられるのは、どちらのモデルもヘッドの据わりがいいところ。ボールの後ろにヘッドをポンと置いたときのフェースアングルは、2モデルともほぼスクエアです。ただし、「ステルス2 HD」は洋ナシ型の形状もあって、少しフェースが右を向いて見えるという人もいそう。その一方で「Qi10 MAX」にはフェースのトップラインにレーザーアライメントラインがあり、ターゲットに対してよりスクエア感を出しやすくなっています。

 構えたときに、どちらがやさしく打てそうで、真っすぐ球を打ち出せそうかと問われたら、大多数の人が「Qi10 MAX」と答えるでしょう。見た目の安心感なら、間違いなく「Qi10 MAX」に軍配が上がります。

直進性が高く、多めのスピン量で球筋が安定する「Qi10 MAX」

 2つのモデルを同一のスペック(ロフト角9度、標準シャフトのフレックスS)で試打計測しながら打ち比べてみました。

形状だけでなく実際に打ってみてもかなり性格の違うドライバーであることが分かった
形状だけでなく実際に打ってみてもかなり性格の違うドライバーであることが分かった

「Qi10 MAX」を打ってみて感じるのは、圧倒的な球の曲がりづらさです。弾道の直進性が高く、それでいて球のつかまりも悪くありません。高慣性モーメントのドライバーにありがちな右に飛び出すミスが出づらいのは好印象です。また、高慣性モーメント設計のわりに、ヘッド後方が重くて垂れるような感覚がありません。軽快に振り切れるのも「Qi10 MAX」の大きな長所です。

 あえて難点をいうならば、今どきのドライバーにしてはスピン量が多めなところです。他社の最新ドライバーで球がドロップしてしまう人や、もともとドローヒッターで低スピンな弾道を打っている人のほうが、「Qi10 MAX」で飛ばせる最適弾道を打ちやすいでしょう。

球がつかまって低スピンになりやすい「ステルス2 HD」

「ステルス2 HD」のHDは、ハイドローの頭文字です。その名のとおり、実際に試打していても球をつかまえやすく、球が上がりやすい印象を大いに受けます。球のつかまえやすさでは、「ステルス2 HD」が「Qi10 MAX」の性能を上回っています。

 ステルス2シリーズの兄弟モデルのなかでは、「ステルス2 HD」はもっともスピン量が多くなるモデルでした。それでも今回の計測数値では「Qi10 MAX」よりはスピンが少なめ。ボールにドロー回転が掛かるとおのずとスピン量は減ってくるので、もちろんその影響を考慮する必要はありますが、強いドローを打ちたい人や、スライスに悩んでいる人には「ステルス2 HD」のほうが良さそうです。ミスヒット時の許容性に関しても、極端に「Qi10 MAX」より劣っているようには感じませんでした。

安定感なら「Qi10 MAX」、つかまり優先なら「ステルス2 HD」

「Qi10 MAX」は、これまでテーラーメイドにはなかった大きな投影面積と曲がりづらさを備えているモデルです。低スピン弾道を打ちづらいという難点はありますが、打ち手によってはそのほうが良い結果が得られる場合もあります。

 ドライバーを左右どちらにも曲げてしまう人には「Qi10 MAX」をオススメします。右に打ち出すミスが多く、少し強い球で飛ばしたい人には「ステルス2 HD」がいいでしょう。小ぶりに感じるヘッド形状を嫌う人もいますが、打ってみるとスライサーにはやさしさが感じられるお値打ちモデルです。

試打・文/鶴原弘高つるはら・ひろたか/1974年生まれ。大阪出身。ゴルフ専門の編集者兼ライター。仕事のジャンルは、新製品の試打レポート、ゴルフコース紹介、トレンド情報発信など幅広く、なかでもゴルフクラブ関連の取材が多い。現在はゴルフ動画の出演者としても活躍中。ギア好きゴルファーの会員制コミュニティサイト『3up CLUB』(https://3up.club/)では、配信される動画のキャスター兼編集長を務めている。Instagram:@tsuruhara_hirotaka

【取材協力】フライトスコープジャパン

「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボール
「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボール

今回の取材はフライトスコープジャパン本社内のパフォーマンススタジオをお借りし、「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボールを用いて計測を行いました。公式サイトhttps://flightscope.co.jp/

鶴原弘高