コロナ禍では「屋外で3密を防げるスポーツ」として新たにゴルフを始める人が増えましたが、最近は競技人口の推移は横ばい気味だそうです。では、よりゴルファーを増やすためにはどのようなことをしていけばよいのでしょうか。

新規のゴルファーを得るためにはゴルフ場にも工夫が必要

 コロナ禍では「密集・密閉・密接」によって感染リスクが高まるとされ、休日に友人や会社の人などと一緒に遊ぶ機会が少なくなってしまった人も多いかもしれません。その一方で、ゴルフは風通しの良い屋外で感染する可能性を減らせるだけでなく、1人や少人数でも楽しめるスポーツとして新規で始める人が増えたことは話題となりました。

 しかし、現在は新型コロナも5類感染症に移行、行動制限も撤廃され「3密」を避ける必要もなくなったため、ゴルフの競技人口は横ばいで推移しています。

人生初めてのラウンドで心が折れてしまう人も…… 写真:AC
人生初めてのラウンドで心が折れてしまう人も…… 写真:AC

 コロナ禍で新たにゴルフを始めた人がそのまま競技を続け、今後も幅広い世代から人気のあるスポーツであってほしいのですが、より一層競技人口をを増やしていくためにはどのようなことが必要なのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「アメリカなど海外では、以前からハーフターンのないスループレーが定着していましたが、日本でもコロナがきっかけとなって選択する人が非常に増えました。ゴルフ場では、チェックイン・アウト時の受付やキャディーバッグの積み下ろし、レストランを利用した際に何かと外部の人と接触したり会話をしたりするシーンが多かったため、スルーであれば『3密』を回避することができると話題を集めたからです。また、1時間前後あるハーフターンが省略されたりムダな待ち時間も減ったりとタイムパフォーマンスにも優れているので、余った時間をほかのことに費やせるようになったと感じた人も多いでしょう」

「ですので、行動制限が解除された現在でもスループレーには一定の需要が残っているので、ゴルフ場としては『プレースタイルの多様化』という面をより強化することが、ゴルフ人気を拡大させる要素になってくるのではと思います。レストラン経営も重要な収入源としているゴルフ場は、スルーのさらなる許容に対して難色を示すかもしれませんが、コースの途中で軽食やドリンクを販売する屋台的なもの置くなどレストランの代わりに収益になるものはいろいろと考えられるはずなので、客単価を上げる方法をもっと柔軟にしていく必要があるでしょう」

 ほかにも、コロナ禍によってクラブハウスにテラス席を設けるゴルフ場も増加したそうです。最近では、若い世代の間でバーベキューのような屋外で食事を楽しむことがトレンドにもなっているので「プレー後にみんなでバーベキューができる」といった付加価値の高いプランも次々に提案するべきと言えそうです。

とにかくゴルフを楽しんでもらえるように接する

 では、ビギナーやゴルフ未経験者がゴルフに興味を持ち、そしてスポーツとして人気をさらに高めるためには、ゴルファーの一人一人には何ができるのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「ゴルフ経験者が、ゴルフを始めたての人やこれから本格的に挑戦してみようか悩んでいる人を連れてコースを回る場合、最初はスコアの良しあしにこだわるのではなく『ゴルフの楽しい部分だけを切り取って思い出として持ち帰ってもらう』ということを意識した方が良いのではないかと思います。ビギナーが上級者とラウンドすると『自分のせいでペースを乱しているのではないか』『絶対にホールアウトしないと終われないのではないか』と神経質になってしまいがちです」

「例えば『トリプルスコアを叩いたらそのホールはギブアップしてボールをピックアップし、次に向けて気持ちを切り替えさせてあげる』のような感じで配慮することが大切でしょう。また、良いショットにも悪いショットにも全てにレッスンが入るとうっとうしくなってしまうので、ナイスショットをした時だけしっかりと褒めて『どこが良かったのか』を簡潔に解説すれば、成功体験として強く記憶されて『ゴルフは楽しいものだ』という気持ちを芽生えさせられると思います」

 日本では、ゴルフの「うまい・ヘタ」を区分する基準として「100切り」などスコアを重要視する風潮がありますが、いくらゴルフ歴が長くても、かなり練習やラウンドを積み重ねないとスコアを向上させるのは難しいです。そうすると「バーディーのような良いストロークがなかなか出せないからつまらない」と、継続できなくなってしまうビギナーも多いはずです。

 そこで、18ホールのストローク数を合計していくのではなく「イーグルは4点、バーディーは3点、パーは2点、ボギーは1点」などとスコアに準拠した点数を記録していく「ステーブルフォード」と呼ばれる方式で遊んでみれば、腕に自信がない人でも比較的簡単にポイントを重ねていけるので、オススメかもしれません。

 ゴルフは性別や体格差、世代に関係なく対等に渡り合えるだけでなく、生涯を通して楽しめる素晴らしいスポーツであり趣味でもあります。そのため、ゴルフ場やプレーヤーなどの垣根を越えて、業界全体でゴルフを盛り上げられるように努めるべきといえるでしょう。

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