ゴルフ場の敷地は非常に広大なため、美しい状態に保つためには多額の費用が必要になります。では、ゴルフ場のコース管理には年間どれぐらいのコストがかかるのでしょうか。

ゴルフ場の間にも“格差”がある

 日本には全国各地に多くのゴルフ場が存在しますが、1カ所当たりの平均的な面積はおよそ100ヘクタールと言われており、これは東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせた広さに匹敵します。

ゴルフ場運営には多額のコストがかかっている 写真:AC
ゴルフ場運営には多額のコストがかかっている 写真:AC

 それだけゴルフ場の敷地は非常に広いので「コースの管理にはどのくらいの費用を要しているのだろう」と考えたことがある人もいるでしょう。

 では、ゴルフ場のコースを維持するのには年間でいくら程度かかるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「ゴルフ場の立地や集客の差だけでなく、サービス面での評価やクラブがどのようなコンセプトのコースを提供したいかによって、コース管理に関わる費用は変化してきます。たとえば、都心から近くて戦略性にも富んだ人気の高いゴルフ場の場合、収益性も優れているので大きな金額をコース管理につぎ込むことができるでしょう」

「しかし、市街地から遠くて行き帰りにも一苦労してしまうようなところでは集客もあまり芳(かんば)しくないので、プレー料金も下げざるをえず、さらに地元のゴルファーを呼び込もうとほかのゴルフ場と価格競争になってより収益も下がってしまいます。そのようなゴルフ場は、やはりコースの修繕や補修に使えるお金も少なくなりがちなので、一口に『コース管理費』と言ってもゴルフ場によって格差が生じているのが現状です」

「18ホールあたりの費用にかかるおおよその目安としては『松』であれば1億円、『竹』であれば6000〜8000万円、そして『梅』になると4000万円ほどしか用意できない場合もあります。予算を十分に確保してもらえるところであれば、よりこだわった仕様にすることも可能なため、品質の良い芝を導入したり高速グリーンにしたりと、試合でも使えるようなコースをゴルファーに提供することができます」

「ゴルフ場にとってコースは命に値するので、できる限り管理にはお金をかけています。各々工夫を凝らして多くの人に魅力を感じてもらえるコースを作りたいというのが、全てのゴルフ場が持つ思いでしょう」

「コース管理者は、別名『グリーンキーパー』とも呼ばれているので、1年を通して全体が緑に覆われた美しいゴルフ場を作るよう努めなければなりません。主な仕事内容としては、芝の刈込みや薬剤の散布、木々の伐採や散水作業など多岐にわたります。特にグリーンは見た目のキレイさはもちろん、ボールの転がり具合にも大きく関わります。さらには繊細で寒暖差や病気にも左右されやすいため、なかでも腕の見せどころとされています」

「ほかにも、芝刈り機や薬剤散布車のような機械の整備・メンテナンスも行わなければならず、次から次へと仕事が入ってくるような状況といえるので、コース管理は体力・気力・責任感を問われる仕事です」

気候変動がゴルフ場運営に与える影響

 近年では、地球温暖化によって猛暑などの異常気象が頻発していますが、コース管理にはどのような影響が出ているのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「日本のゴルフ場では、グリーンにベント芝といった洋芝を採用しているケースが多いですが、洋芝は暑さに弱い傾向があるため夏になったらすぐに散水ができるよう、周囲にスプリンクラーを設置していることがよくあります。一方で、フェアウェイやラフはコーライ芝などの和芝を使用しており、洋芝に比べれば暑さへの耐性は持っているものの、やはり定期的に水を撒く必要が生じてきます」

「そこで、タンク車による散水作業を実施していますが、ここ最近は猛暑が続いたことで散水が追いつかなくなり、乾燥の影響で昨年も全国のゴルフ場でフェアウェイが真っ赤に焼けてしまうという事案が発生しました。今さらスプリンクラーを増設しようとしても、全体に設備を張り巡らせるには5億円近くかかると言われているので、現在ある設備を使って応急措置で何とか持ちこたえようとしているのが現状です」

 コース管理はただでさえ大変な仕事であるにも関わらず、気候変動でさらに過酷なものになっているようです。そこに人件費の高騰や人材不足も重なってくるため、ゴルフ場はコース管理に一層の工夫をしなければ、生き残るのも難しくなるかもしれません。

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