ゴルフ場によって、大きさや数に違いがあるティーイングエリア。ティーマークを設置する場所に決まりはあるのでしょうか? ゴルフ関係者にティーイングエリアの使い方について話を聞きました。

土日と平日で場所を使い分けて芝生の品質が偏らないようにする

 同じゴルフ場に何度か足を運ぶようになると、「あれっ、このホール、前回来たときはティーイングエリアがもっと前だった気がするけど、今日はだいぶ後ろだな」と感じることがあります。その印象はほぼ間違いなく合っています。

 ゴルフ場のティーイングエリアの位置は毎日変わるわけではありませんが、日によって変わることがあります。どのような理由でティーイングエリアの位置を変えるのでしょうか。ゴルフ場関係者に聞いてみました。

「一番の理由はティーイングエリアの芝生の品質が偏らないように、ローテーションして芝生を保護するためです」

ほとんどのゴルフ場には、複数のティーイングエリアが存在している
ほとんどのゴルフ場には、複数のティーイングエリアが存在している

「ゴルフ場は土日の来場者が多く、平日はやや少なくなります。ゴルフ場の営業日は平日5日間、土日2日間ですから、日数で比較すると5:2です。しかし来場者数で比較すると、5:5まではいかないにしても、平日5日間と土日2日間の来場者がほぼ同じです」

「したがって来場者数に対して芝生を均等にローテーションしようとすると、平日5日間同じ場所を使った後に、土日2日間は別の場所を使うという感じになります」

「土日2日間は混みますから、プレー進行を早めるためにティーイングエリアを前寄りに設置します。そうすると平日はティーイングエリアを後ろ寄りに設置することになります」

「これはティーイングエリアだけでなく、グリーンのピンポジションも同じことが言えます。土日はグリーンの踏圧面積を少なくするため手前側にカップを切ることが多くなります。そうすると平日は奥側にカップを切ることになりますから、平日は土日に比べて難しいセッティングになります」

 プロゴルフトーナメントではホールの難易度に変化をつけるためにティーイングエリアの位置を変更しますが、一般営業のゴルフ場は芝生の保護とプレー進行のことを考えながらティーイングエリアの位置を変更しています。

ティーマークの向きにもゴルフ場の意図が込められている

 また、ティーイングエリアに立ってフェアウェイ方向を見渡したとき、「このティーマークは何だか右を向いているな」あるいは「左を向いているな」と感じることがあります。その印象もほぼ間違いなく合っています。

 ゴルフ場は基本的にフェアウェイに対して垂直にティーマークをセットしますが、左サイドに大きなトラブルがあるホールでティーマークを右向きにセットしたり、右サイドに大きなトラブルがあるホールでティーマークを左向きにセットしたりすることがあります。理由は、そのほうがプレーの進行がスムーズになるからです。

やや斜めに向いていると感じることがあるティーマークだが、それにはプレーの進行を意識したゴルフ場の意図がある
やや斜めに向いていると感じることがあるティーマークだが、それにはプレーの進行を意識したゴルフ場の意図がある

 ゴルフ場はラフや林の中も均一なコースコンディションに整備しようとしますが、日当たりの良し悪しや散水設備の配置などによって、どうしてもムラが出ます。そうするとボールが見つかりやすい場所と見つかりにくい場所がおのずと決まってきます。

 ボールが見つかりにくい場所に打ち込む人が増えるとプレー進行が遅くなります。ティーマークの向きを変えることで、そういったトラブルを防ぐ効果があるそうです。

 そういったことを知らずに、「このホールのティーマークは曲がっているな。真っすぐに直しておこう」とティーマークを挿し直す人がいます。

 でも、前述したとおりティーマークの向きにはゴルフ場の意図が込められているケースもありますから、このような行為は小さな親切大きなお世話です。規則の面でもプレーヤーがティーマークの位置を動かすのは越権行為です。

 ティーマークの向きが自分の狙いどころと異なっている場合、自分なりにターゲットを取り直し、そこに向かって打つようにしましょう。

 ティーイングエリアの位置や向きによって、各ホールの見え方が変わりますから、同じゴルフ場を何度プレーしても新鮮な表情を楽しむことができるわけです。

保井友秀