アイアンのロフトがどんどん立ってきている昨今、ピッチングウェッジ(PW)の下、アプローチウェッジ(AW)やサンドウェッジ(SW)より上の「間のウェッジ」をどうするかは、とても重要な問題になってきています。ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の店長小倉勇人さんに、この疑問をぶつけてみました。

アイアンセットのギャップウェッジを積極的に取り入れて欲しい

 ロフトの立ったアイアンが増え、「飛び系」のアイアンが目立ち始めた15年ほど前から、「ピッチングウェッジ(PW)以下のウェッジをどうやって構成するか?」という問題はつねに存在しました。

 従来の52、58度などのウェッジ2本ではカバーしきれない部分を、46〜48度のウェッジを増やして単品ウェッジ3本で補うといった手法がそれです。しかし近年では、少し様相が変わってきていると小倉店長はいいます。

人気の飛び系アイアン、ヤマハ「ドライブスター」もPW下の番手選びには注意が必要!?
人気の飛び系アイアン、ヤマハ「ドライブスター」もPW下の番手選びには注意が必要!?

「最近は、PWの下に第二のPWやアプローチウェッジ(AW)など、いわゆる『ギャップウェッジ』をセットとしてラインナップするメーカーも増えてきました。これらはウェッジというよりも、アイアンとしてPWからの流れを汲んだ設計になっているので、単品ウェッジよりもやさしく飛んで扱いやすくなっています」

「飛び系のアイアンをお使いの方は、セットをPWまでと考えず、こういったさらに下のクラブを増やすことをオススメしたいですね」(小倉店長)

 たとえばヤマハの「インプレス ドライブスター」では、ロフト37度のPWの下に42度のAW、48度のアプローチサンド(AS)、55度のサンドウェッジ(SW)がラインアップされています。本間ゴルフの「ベレスNX」も、ロフト40度の10番アイアン(PW相当)からロフト5度刻みで11番、AW、SWとそろっています。

 それほどロフトが立っていないモデルでも、ピン「i230」のように、45度の「P」の下に50度の「U」が用意され、従来のウェッジセットとの間を埋める番手を増やしているアイアンもあります。

「飛び系アイアンは、ヘッドが大きくてやさしく、フェースの反発性能が高かったりシャフトが長いなど、ロフトだけでない飛ばし機能を備えているものも多いです。従って、PW以下をロフトでそろえた単品ウェッジにしても、飛距離やスピン性能、フィーリングなどの面で違和感が生じやすいんです」

「その点、とくにフルショット主体で使うクラブであれば、こういったアイアンセットのもののほうが、統一感も出て扱いやすいと思います」(小倉店長)

単品ウェッジはロフトとシャフトにご用心

 これらのアイアンセットのギャップウェッジでPWの下を埋めたとしても、そこからAWやSWなどの単品ウェッジにつなぐ場合には注意が必要だと小倉店長はいいます。

「飛び系アイアンと単品ウェッジでは、同じロフトでも前者のほうが1番手ぐらい飛んでしまうケースが多いんです。そのため、アイアンセットのPWとAWが40度、45度と5度間隔で並んでいるからといって、その次の単品ウェッジも5度間隔で50度にしてしまうと、その間の飛距離のギャップが大きくなってしまう可能性が高いのです」

ロフトの数字だけでそろえてしまうと、思わぬ距離のギャップに悩む可能性もある 写真:AC
ロフトの数字だけでそろえてしまうと、思わぬ距離のギャップに悩む可能性もある 写真:AC

「こういう場合は、ロフト間隔がそろわなくても飛距離を優先し、45度のアイアンセットAWの下は47〜48度の単品ウェッジにするなど、ロフト間隔を詰める配慮が必要です」(小倉店長)

 その結果、きちんと距離の階段を埋めアプローチで使うクラブをそろえていくと、ウェッジがPWを含めて5本になるようなケースも出てきます。今後はそれが当たり前だと考えるべきかもしれません。

 単品ウェッジを加える際は、シャフトの重量にも注意が必要です。特にカーボンシャフトの飛び系アイアンを選んだ場合、総重量が軽めな場合がほとんどです。そのためその下のクラブを「ウェッジだから」と無造作にスチールシャフトにしてしまうと、一気に重くなってセッティングの流れを損なう危険があります。

「アプローチ専用に近い使い方なら多少重くても問題ありませんが、フルショットに多用する場合は、重さが合わないとミスの原因になります。その意味でも、アイアンセットの流れで同じシャフトを装着できる、セットのギャップウェッジはとても有効だと思います」(小倉店長)

 アイアンセットは「PWまで」というのがこれまでの常識だったかもしれませんが、これからはそれをアップデートし、もっと下までを「セット」として考える必要があるのかもしれません。

鈴木康介