■業績動向



1. 2023年2月期の業績概要

ウイングアーク1st<4432>の2023年2月期の連結業績は、売上収益で前期比12.7%増の22,349百万円、営業利益で同0.7%減の5,945百万円、調整後EBITDAで同2.1%減の7,163百万円となり、2022年4月に発表した期初時点での会社計画(売上収益21,000百万円、営業利益4,750百万円、調整後EBITDA6,000百万円)、2023年1月の第3四半期決算発表時に上方修正された会社計画(売上収益22,000百万円、営業利益5,650百万円、調整後EBITDA6,900百万円)を上回った。帳票・文書管理ソリューションとデータエンパワーメントソリューションがともに堅調に推移したことが大きい。



帳票・文書管理ソリューションの売上収益は前期比16.3%増の14,354百万円となった。企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類を設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び電子データの保管や紙文書の電子化を行う「invoiceAgent」が主な構成要素となっている。「SVF」は、底堅い需要を背景にソフトウェアライセンス及び保守ともに堅調に推移した。一方、クラウドサービスは、業務システムのクラウド化がさらに進行している影響でクラウド帳票のニーズも増加しており、同32.4%増の売上となった。この結果、「SVF」の売上収益は13,086百万円(同16.4%増)となった。「invoiceAgent」は、リモートワークの浸透に伴う企業のペーパーレス需要の増大及び改正電子帳簿保存法(電帳法)が2022年1月に施行され、電帳法関連の引き合いが活発になったことから、ソフトウェアライセンス及び保守、クラウドサービス全て好調に推移し、売上収益は1,122百万円(同19.4%増)と成長した。



データエンパワーメントソリューションの売上収益は前期比6.7%増の7,994百万円となった。企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化することにより、業務の効率化や生産性の向上を実現するソフトウェア及びサービスである「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっている。「Dr.Sum」は、中堅企業からの受注が増加しソフトウェアライセンスは前期から増加した。この結果、売上収益は2,929百万円(同8.7%増)となった。「MotionBoard」は、ソフトウェア保守は、新規契約を着実に積み上げ、堅調に推移した。クラウドサービスは、大型案件の剥落の影響があったものの、新規契約の獲得やカスタマーサクセスを強化したため、売上収益は前期を上回ることができた。この結果、「MotionBoard」の売上収益は2,982百万円(同3.8%増)となった。



同社グループは、IFRSにより規定された財務指標以外に、EBITDA、調整後EBITDAを開示している。通常の営業活動の結果を示していると考えられない非経常的な費用項目の影響を除外することで、投資家が同社グループの業績評価を行い、同社グループの企業価値についての純粋な成長を把握する上で有用な情報を提供することが目的である。



2023年2月期のEBITDAは、売上収益は順調に拡大したものの、「中期経営方針」で示された戦略投資予算の実行に伴い、7,163百万円(前期比1.3%減)とわずかながら減益になった。調整後EBITDAは、一時的な費用調整項目がなくなったことから、EBITDAと同額の7,163百万円(同2.1%減)となった。なお、調整後EBITDAマージンは32.1%(前期は36.9%)と低下した。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)