マクラーレン・レーシングは、バクー市街地サーキットで行なわれたF1第4戦アゼルバイジャンGPで今季マシン『MCL60』に大幅改良を加えたフロアを投入したものの、CEOのザク・ブラウンのお眼鏡にかなうパフォーマンス域には達していないようだ。

 マクラーレンはシーズン開幕前から、MCL60の”ローンチスペック”は空気抵抗が大きく、アゼルバイジャンGPで大型アップデートを投入すると明かしていた。

 宣言通りマクラーレンは新たなマシンパッケージを持ち込み、空力効率の改善を目指した。ただ、MCL60のドラッグ過多の症状が一夜にして消えることはなかった。ランド・ノリスはアゼルバイジャンGP決勝で9位入賞を果たしたもののトップスピードには苦しみ、しばらくニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の攻略に手間取った。

 直接のライバルであるアルピーヌが信頼性トラブルやクラッシュに見舞われていることから、コンストラクターズランキング5番手につけているマクラーレン。今後に向けてブラウンは、「空気抵抗が大きすぎるのは明らかで、空気抵抗に影響しないダウンフォースを生み出す必要がある」として、次のように続けた。

「マシンにはいくつか新しいモノを投入している。開幕当初から言っていた通り、我々はスロースタートとなった。アップデートでチームが素晴らしい仕事をやってのけたのが確認できたのは良かった」

「アップデートは今後も続くが、それは他の9チームもやっていることだ」

 マクラーレンがアップデートを投入したアゼルバイジャンGPは、今季初のスプリントが実施される週末だった。しかも今シーズンからこのフォーマットが変更され、フリー走行が1回のみに削減されるなど、新パーツを試す十分な時間はなかった。

 そのため通常のフォーマットで行なわれるマイアミGPでマクラーレンは、新パッケージのポテンシャルをより引き出すことができるとブラウンは考えている。

「バクーはスプリントレースが行なわれたから、(アップデートで)何が起こっているのかを理解し、微調整するためには2〜3セッションが必要だと思う」とブラウンは言う。

「だから、この週末(マイアミGP)でまだ学習を進めることになると思う」

 そのマイアミGPでは、初日はノリスがフリー走行2回目で6番手と上位に顔を出した一方で、2日目のフリー走行3回目では19番手と下位に沈んだ。

 ただアゼルバイジャンGPで行なわれたアップデートは、計画の初段階。サマーブレイク前には「Bスペックのようなモノが投入される」予定となっている。

 マクラーレンはマシン開発と平行して、技術体制も刷新。今季からチーム代表に就任したアンドレア・ステラの下に3名のテクニカルディレクターを設け、ライバルチームからスタッフを引き抜いている。

 ブラウンは、次回以降のアップデートにはこの体制変化の好影響が現れていると考えている。

「我々が行なったのは、組織を最適化し、役割を明確にすることだ」とブラウンは説明する。

「アンドレアは我々の組織構造が最適化されていないと考えた。そこで我々は、最適な組織の体制はどうあるべきかを考え、組織図に落とし込んでいった」

「新体制を最適化すべく、いくつか変更を加えた。そのため、MTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)内部は活気に満ち、明瞭な体制になった」

「これから行なわれるアップデートは、我々が導入した新体制の成果を示すモノで、1年を通して発展していくことを期待している」