いよいよ伝統の1戦F1モナコGPがやってくる。フランスとイタリアの国境に交わるモナコ・モンテカルロで開催されるモナコGPは1929年に初開催を迎えた。F1が世界選手権として発足した1950年以降は、基本的なコースレイアウトを変えることなく、COVID-19の影響により中止となった2020年を除き毎年開催されている。

 ル・マン24時間レースやインディ500と並び「世界3大レース」のひとつとして数えられ、F1ドライバーにとって”モナコウィナー”として名を刻むことは、他のグランプリとは異なる栄誉だ。

 選手権としては69回目となる2023年のモナコGPの開催を前に、これまでのレースで誰がどのような結果を残しているのかをまとめてみた。

勝利数

 F1モナコGPの最多勝記録を持っているのは、”モナコマイスター”ことアイルトン・セナ。彼はロータス・ホンダで1987年に初優勝を遂げ、1989年から1993年まで5年連続でマクラーレンと共にモナコを制し、勝ち星を6としている。

 中でも特筆すべきは1992年大会。レース終盤の緊急ピットインにより2番手に順位を下げたウイリアムズのナイジェル・マンセルが、アクティブサスペンションをはじめとする最新鋭装備を盛り込んだ最恐『FW14B』を武器にマクラーレンのセナを猛追。マシンパフォーマンスやタイヤライフの差は歴然だったものの、セナはマンセルに隙すら与えず、トップでチェッカーまで『MP4/7A』を運んでみせた。

 フジテレビの実況アナウンサーである三宅正治が発した「ここはモナコ・モンテカルロ。絶対に抜けない!」という名言が生まれたのもこのレースだった。

 セナに次いでモナコGPを多く制しているのは、グラハム・ヒルとミハエル・シューマッハー。ふたりは共に5勝で並んでいる。アラン・プロストが4勝。スターリング・モス、ジャッキー・スチュワート、ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグの4名が3勝ずつで並んでいる。

 現役ドライバーの中で優勝経験があるドライバーはメルセデスのハミルトンに加え、2勝のフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)と、過去2年で1勝ずつを分け合うレッドブルのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスの4名。メルセデスはマシンパフォーマンスの面で今年も厳しいシーズンを過ごしているものの、特殊なモンテカルロ市街地サーキットでは異なる結果となることもあり、ハミルトンがプロストの記録に並ぶ可能性もゼロではない。

 また、コンストラクターとして最もモナコGPを制しているのはマクラーレンとなる。記録は13勝と、2番目に多い9勝のフェラーリを大きく突き放している。モナコではセナやプロストに加え、ミカ・ハッキネンやデビッド・クルサード、キミ・ライコネンなどがマクラーレンで勝利を飾っている。ハミルトンのモナコGP初優勝も、マクラーレンで走った2008年大会だった。

 3番目に勝利数が多いのは7勝のロータス。今年の優勝候補筆頭であるレッドブルはモナコで6勝を挙げており、メルセデスがBRMと並び5勝となっている。

 ちなみにエンジンまたはパワーユニット(PU)メーカーでは、60年代後半から80年代前半までに様々なチームに搭載されたフォード・コスワースが最多の13勝。ワークスとしてだけでなく、マクラーレンやブラウンGPと共にモナコを制したメルセデスが12勝で追いかける形となっている。今年はメルセデスのカスタマーPUを積むアストンマーチンがワークスを上回る活躍を見せており、最多勝記録タイに並ぶ可能性は大きい。

 また、フェラーリはコンストラクターと並んでエンジン/PUメーカーとしても計9勝。ホンダとしては計7勝だが、実質的にはホンダ製PUであるレッドブル・パワートレインズでの1勝、無限ホンダとして挙げた1勝を合わせると、フェラーリと勝利数で肩を並べることになる。

ポール・トゥ・ウィン

 最多ポールポジションはセナの5回。ファン-マヌエル・ファンジオとジム・クラーク、スチュワート、プロストが4回、モスやニキ・ラウダが3回で並んでいる。

 現役F1ドライバーでは、アロンソとハミルトン、フェラーリのシャルル・ルクレールが2回のポールポジションで並んでいる。ただ、ルクレールは2021年はポールタイムを記録した後にクラッシュを喫したことがキッカケで決勝では出走できず、ウェットレースとなった2022年にはタイヤ戦略が後手に回り、ポールながらも表彰台獲得すら逃している。

 また、コンストラクターでは、フェラーリが最多12回のポールポジション。マクラーレンが11回で2番目に多く、ロータス、ウイリアムズ、メルセデス、レッドブル、ルノー、ブラバム、ティレルが複数回のポールポジションを獲得している。

 エンジン/PUメーカーとしては、フェラーリとルノーが12回で最多タイ。メルセデスが11回、フォード・コスワースが9回、1950年代から1960年代にかけてF1にエンジンビルダーとして参戦していたクライマックスが7回を記録。ホンダは5回で6番目に多いポールポジション回数となっている。一方で、ルノーはフェラーリとポールポジション回数最多で並んでいるものの、優勝回数は6回とポールからの勝率は50%だ。

 そして絶対に抜けないとまで言われるからこそ、モナコGP最大の山場は予選セッションとなる。

 実際、過去68回のモナコGPのうち30回がポール・トゥ・ウィン。その確率は44.1%という数字となっている。フロントロウスタートとなると67%の確率で優勝。3番グリッド以上からのスタートでは85%と、予選順位でいかに上位につけているのかが重要になるかが分かるだろう。

 なおマシンの大型化も関係していると考えられるが、1997年以降では3番グリッド以上から出走したドライバーの優勝が100%となっている。

 ただ、必ずしも後続のドライバーがモナコで勝てない訳ではない。

 1996年には、誰も優勝候補としては考えていなかった14番手スタートのリジェ・無限ホンダ『JS43』を駆るオリビエ・パニスが、完走台数3台というサバイバルレースを生き残り、トップチェッカーを受けた。時を遡って1984年のモナコGPでは、当時新人だったアイルトン・セナが非力なトールマン『TG184』で勝ちかけたこともあった。

 1996年と1984年はいずれもウエット絡みのレースであり、雨のモナコGPとなると荒れたレース展開になる傾向がある。そして今年も、モナコGP決勝日となる5月28日(日)は雨の予報となっている。