2026年からは、F1のパワーユニット(PU)に関するレギュレーションが変更される。そのため、ワークスPUを手にしたチームが有利になるのではないかと考えられているが、どんな影響が及ぶ可能性があるのかについて、カスタマーチームの代表たちが説明した。

 アストンマーチンは5月24日に、2026年からホンダのPUを使うことを発表した。同チームとしては、待望のワークスPUを手に入れることになる。

 ホンダは、2026年からのPU製造者登録を行なった6メーカーのうち、供給先が決まっていなかった最後の1メーカーである。メルセデス、フェラーリ、アルピーヌ(ルノー)はメーカー直系のチームであり、レッドブルはレッドブル・フォードと名付けられるであろうPUを使い、ザウバー(現アルファロメオ)はアウディとの提携が決まっている。

 これにより、マクラーレン、ウイリアムズ、ハース、アルファタウリは、ワークス契約のない状態で2026年からの新レギュレーション時代に挑むことになる。ただアルファタウリはレッドブルのセカンドチームとも言える存在であり、フォードとの提携の恩恵を受けることができるだろう。またハースはフェラーリと密に関係しているため、その恩恵を受けるはずだ。

 ウイリアムズは、現時点では今後もカスタマーチームであり続けるチームのひとつであろう。そのため、現在のままメルセデスのPUを使い続けるか、あるいは他のメーカーとの契約を結ぶのか……今季からチーム代表を務めているジェームス・ボウルズが検討しているモノと見られている。

 ボウルズ代表は、新しいレギュレーションが導入される1年目は、カスタマーチームにとっては厳しい状況になる可能性を認める。しかしながらレギュレーションが導入されてから数年も経てば、カスタマーチームでも競争力を手にできるはずだと考えているようだ。

「2026年には、厳しい状況になる可能性がある」

 そうボウルズ代表は語った。

「しかし、その後すぐに学ぶ段階が始まるだろう」

「アストンマーチンが示したのは、それ(カスタマーチーム)でも、戦えるということだと思う。とはいえ、彼らは独自の道を進もうとしている。それが、必ずしも安定したレギュレーションによって、制限されるわけではないと思う」

 ボウルズはつい最近まで、メルセデスの戦略担当エンジニアを務めていた人物。つまりワークスチームの状況も、今のウイリアムズのようなカスタマーチームの状況も、いずれも理解している。

 ボウルズ代表はカスタマーチームとしては妥協する必要もあることを認めたが、同じ仕様のPUを供給しなければいけないというレギュレーションにより、アストンマーチンは競争力を発揮することができたと言う。なおウイリアムズもアストンマーチンと同じように、メルセデスのPUとギヤボックスを使うことで、マシン全体を統合させようとしている。

 アストンマーチンは、2026年からはホンダのPUを使うため、メルセデスのギヤボックスを使えなくなるため、自前で調達しなければならない。一方ウイリアムズは、まだ決定を下していない。

「エンジンメーカーとの連携が密であればあるほど、必要に応じてマシンのリヤエンドのレイアウトを行なうことができる」

 そうボウルズ代表は語る。

「空力と冷却、そしてパフォーマンスと発電量といった部分で、妥協するポイントを自分たちで決めることができる。そして、全ての目標を理解することができるんだ。我々は現在メルセデスのカスタマーチームだが、それを調整するのは非常に困難だ」

「しかし現在は非常に優れたレギュレーションが導入されている。我々に供給されているPUは、他と同じPUであることを意味しているんだ。何年も前は、そうではなかった。だから少なくとも、発生するパワーは素晴らしいと、私は確信している」

 現在フェラーリのスポーティング・ディレクターを務めており、来季からアルファタウリのチーム代表に就任する予定のローレン・メキーズは、ワークス契約を結ぶことが、2026年に現在よるも重要になるとは考えていないという。

「言うまでもなく、シャシーとPUの間での統合できる部分が多ければ多いほど有利になる」

 そうメキーズは語った。

「しかしワークス契約がなければ、非常に高いレベルで仕事をすることはできないということだろうか? でも、そういう契約がなくても、非常に良い仕事をしていることを証明しているチームもいる。だから、将来的に現在よりもワークス契約が重要になるとは思わない」

「現在のパワーユニットは、非常に複雑なモノになっていると思う。しかし、その複雑さを軽減するために規制が行なわれており、うまくいけばパフォーマンスの差が縮まることになるだろう」