FIAのコンプライアンス部門は、2023年のF1の2グランプリにおいてFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長が不正に干渉したという内部からの告発を受け、調査を行なってきた。この結果、不正干渉の証拠は確認できなかったという。

 ベン・スレイエム会長は2023年、F1のふたつのグランプリにおいて、不正な形で関与したのではないかという疑いがかけられていた。

 ひとつ目はサウジアラビアGPでのことだった。このグランプリでは、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソが、正しいスタート位置からスタートしなかったとして、レース中に5秒のタイム加算ペナルティを科された。チームはこのペナルティをピットストップ時に消化すべく、作業を始める前に5秒間停止し、その後タイヤ交換作業に取り掛かった。しかしスタッフのひとりが、5秒が経過する前にジャッキに触れてしまったとして、レーススチュワードは10秒のタイム加算ペナルティを科すことを決めた。後にこの10秒加算ペナルティは取り消されたが、ベン・スレイエム会長がこのペナルティ取り消しの決定に関与したと言われているのだ。

 ふたつ目はラスベガスGPについてのものだ。ラスベガスGPはF1の肝入りで実現したイベントだったが、ベン・スレイエム会長はこのコース認定を承認しないよう、FIAに圧力をかけたという疑惑が浮上していたのだ。

 FIAコンプライアンスオフィサーと、6人からなる倫理委員会はこの件について調査。その結果、ベン・スレイエム会長が不適切な行為を行なったという証拠はなかったと、水曜日(3月20日)に明らかにされた。

 この調査については30日間を要し、その間に11人の証人に対する聞き取り調査も行なわれた。

 FIAはこの件について、次のように声明を発表している。

「調査結果を検討した結果、倫理委員会はFIA会長のモハメド・ベン・スレイエムが関与したとされるいかなる種類の干渉疑惑を立証する、いかなる証拠も存在しないという判断で、全員が一致した」

「FIA会長に対する疑惑には根拠がなく、FIA倫理委員会の決定を裏付ける合理的な疑いを超えた、強力な証拠が提示された」

「今回の調査の過程を通じて、会長は全面的に協力し、透明性を保ち、コンプライアンスを遵守したことが大いに評価された」

 ベン・スレイエム会長は最近、GPレーシング誌に次のように語り、疑惑を否定していた。

「新しいコースも含め、全てのコースの公認に署名するのは、FIA会長の責任だ。私はそれを指示した」

「(承認の期限に間に合わなかったため)私はノーと言うこともできたはずだ。しかし、チームが安全だと言った直後に、私は署名した……私はドライバーでもあるから、そこでレースをするドライバーや周辺の人々、つまりスタッフやマーシャルの安全を気にしているんだ」

「でも、それは大変なことだった。もし私がノーと言っていたら、(F1にとって)悲惨な結果になっていただろう。しかしそれは問題なかった。でも、私はこのスポーツが大好きなので、そういう部分には気を配っているんだ」