メルセデスはF1日本GPでジョージ・ラッセルが7位、ルイス・ハミルトンが9位に終わった。チームは失敗に終わった1ストップ戦略について、上位のマシンとは異なることをしようとしていたと説明した。

 メルセデスの2台はミディアムタイヤでレースをスタートしたが、オープニングラップに発生したクラッシュによりレースは赤旗中断。各ドライバーはここでタイヤを履き替えるチャンスが得られた。

 メルセデスはここで2台にハードタイヤを履かせた。これによりタイヤの使用義務をクリアし、その後もう1セットのハードタイヤに履き替える、実質的な1ストップでレースを戦おうと考えたのだ。

 しかしレースが再開されると、メルセデス勢のペースは悪く、プランを変更してレース終盤3分の1をミディアムタイヤで走ることに。ポジションを上げることができずに終わった。

 1ストップ戦略にメルセデスが踏み切った理由について、チームは「上位の車とは違うことをしようとしていた」と語った。

 メルセデスが新品ハードタイヤを2セット持っていたこと、赤旗中断でタイヤ交換義務を消化できることがその背景だ。

 なおシャルル・ルクレール(フェラーリ)とケビン・マグヌッセン(ハース)はミディアムタイヤからハードタイヤに履き替える1ストップ戦略でレースを走りきっている。

「基本的には、ちょっと違ったことができると考えたんだ」

 メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリンはそう説明した。

「トップ10でハードタイヤを2セット持っていたチームは、我々とマクラーレンだった。レッドブルとフェラーリはミディアムタイヤを2セット持っていたんだ。そしてその時点で、ハードとミディアムを比較するのに十分な情報がなかった」

「ミディアムとハードを使うよりも、ハード2セットでワンストップを達成するほうが簡単なのは確かだ。赤旗の時点で、我々はすでにミディアムタイヤを使っていたしね」

「さらにグリッドの後方を見渡せば、他のチームからの脅威はなかった。彼らは我々より遅かったし、我々のレースに関わってくる可能性もなかった」

 ルクレールがミディアム→ハードの1ストップで8番手から4位に浮上した一方で、ラッセルとハミルトンのふたりはペースが上がらず、ハミルトンはリスタート時にマシンバランスに影響するダメージを負ったことでさらに苦境に立たされた。

「問題はハードタイヤでのスティント終盤が十分に良くなかったことだ。そのせいでポジションを落としてしまった。トラフィックでも少しロスをしたが、根本的には十分な速さがなかったんだ。我々は今、それについて理解しようとしている」

「鈴鹿ではタイヤがかなり高温になる。少しオーバーヒートしていたし、トラフィックにつまるとスライドが多くなって、グリップが落ちてしまうんだ。特に我々は低速コーナーで苦しんでいた」

「ヘアピンやシケインがそうだ。そこでかなりのタイムを失っていた。クルマをターンさせるのが難しくて、両方のコーナーでロスしていたんだ。タイヤが古くなるにつれてスライディングが激しくなり、温度も高くなってしまった」

 メルセデスは、ハードタイヤを使用した第1スティントでなぜあれほどペースが悪かったのか、その答えを探している。ハードでの第2スティント、ミディアムタイヤでの最終スティントはフェラーリやマクラーレンと近い競争力を示していたからだ。

「今はその問題を完全に理解したとは言えない。レースが終わってすぐのことだからね」とショブリンは付け加えた。

「何が起こったのか、なぜルクレールのように最初のスティントを長くしたにも関わらず、大きく順位を落としてしまったのか、正確に解明するのが、これから数日かかる我々の仕事のひとつなんだ」