ドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤは、MotoGPスペインGPスプリントレースでのリタイアには、横行する“無計画な”オーバーテイクが関係していると語った。

 アクシデントが発生したのはレース3周目。バニャイヤはターン1でワイドに走ったマルコ・ベッツェッキ(VR46)のスイッチラインをとってインを差したが、ブラッド・ビンダー(KTM)がさらにその2台の内側を走り、行く手を阻まれたバニャイヤはサンドイッチ状態で接触し転倒してリタイアとなった。

 ライバルのホルヘ・マルティン(プラマック)がスプリントレースを制したことで、バニャイヤはチャンピオンシップで42ポイント差をつけられた。

 バニャイヤとビンダー、ベッツェッキのアクシデントはFIMスチュワードの審議対象となったものの、“レーシングインシデント”という裁定が下り、それ以上の処分はなかった。ただバニャイヤはその裁定に納得がいっていないようだ。

「レーシングインシデント。それがレースディレクションの裁定で、それが彼らの仕事だ。仕方のないことだ」とバニャイヤは言う。

「僕としては、縁石に乗りながらふたりのライダーをオーバーテイクしようとするのは正しいラインじゃない。でも僕は、誰かにペナルティを付与するためここにいるわけでもない」

 バニャイヤはビンダーを名指しで非難することはしなかったが、“イン側にいた奴”にアクシデントの責任があると主張した。

「もちろんイン側の奴に原因があったのは確かだ。かなりクレイジーだと言わざるを得ないね」とバニャイヤは言う。

「2周と1コーナーの半分を走っただけなのに、最初の2周で4〜5回の接触があった」

「スプリントレースは時々、無計画なオーバーテイクみたいになることがある。ただバイクを飛ばして、横にいるライダーと当たっても関係ないみたいな感じだ」

「ただオーバーテイクしようとしている。だからレース中に何度も接触が起こるんだ」

 一方でビンダーは、2周目の最終コーナーからの立ち上がりでリヤタイヤを滑らせてしまったことが事の発端だと考えている。これによりビンダーは、バニャイヤとベッツェッキに先行される形となった。

 ベッツェッキがビンダーをターン1で抜き切ろうとブレーキングを遅らせ、バニャイヤもわずかにアウト側へはらんだ。その隙にビンダーはイン側のラインを攻めたのだ。

「僕は普通のラインを走っていた」とビンダーは言う。

「コーナー進入ではね。映像を見たけど、確かにコーナー途中ではいつもよりタイトだった」

「でも僕は最終コーナーの立ち上がりでちょっとハイサイドしかけて、彼らに割り込まれてしまった」

「1台は左へ、1台は右へ行った。イン側のバイク(ベッツェッキ)が突っ込んでくるように見えたから、カオスになると思っていたよ……正直、(ターン1で)僕は2台ともまっすぐ行くと思って僕は自分の通常ラインを通った。それで2台のマシンに彼が挟まれたように見えたんだ」

 またベッツェッキは、ターン1付近には大きな縁石があって抜き返されるスペースも少ないため、多少コーナーで膨らんでも抜き切ることができると感じていたという。

 そしてベッツェッキは、バニャイヤは「僕と接触を避けられなかった」と語る一方で、ビンダーに責任をなすりつけることはせず、次のように語った。

「自分自身をさらけ出したくはない。そうするたびにみんなが僕を打ちのめそうとするからね」