メルセデス・ベンツ日本が、カタログなどでオプション機能を「標準装備」と誤認させる表示をしたとして、2024年3月12日に消費者庁から課徴金納付命令を受けました。景品表示法違反で12億3,097万円と、過去最高額として話題になっています。
今回の記事では、景品表示法違反の事例としてメルセデス・ベンツ日本のケースを紹介します。

事態の概要

今回のケースを時系列順に整理します。メルセデス・ベンツ日本は、一部製品のカタログやウェブサイト上での表示が消費者を誤解させる恐れがあるとして、消費者庁から措置命令を受けました(2021年12月10日付)。


対象となったのは、SUVの「GLA」「GLB」シリーズと高級仕様のオプション「AMGライン」です。ダイレクトステアリングや自動再発進機能などの高性能設備を、「標準装備」と誤認させる表示がありました。


実際にはこれらの機能はオプションであり、追加料金が必要です。「AMGライン」に含まれるサスペンションも、実際には標準と同じグレードのもので、こちらも問題になっていました。具体的には、以下の表のとおりです。


なお、不備が認められたカタログ・冊子は以下のとおりです。

The GLA Data Information
The new GLA Data Information
The new GLB Data Information The New GLB


その後、2024年3月12日に、景品表示法第8条第1項にもとづく課徴金納付命令を受けています。メルセデス・ベンツ日本は、今回の件についてお詫びしつつ、「今後も引き続き、法令遵守の徹底と管理体制の強化を図り、再発防止に努めてまいります」とコメントしています。

景品表示法第5条について

今回のケースに当てはまるのは、景品表示法第5条です。こちらは、消費者に誤解を招くような不当な表示を禁止することを定めています。


景品表示法第5条1号では、「優良誤認表示」を禁止しています。商品やサービスが実際よりも優れていると示す、または他の事業者の同種・類似商品・サービスよりも優れていると誤って示す表示です。消費者が誤解し、自分で合理的な選択をすることが困難になりま す。

具体例を挙げると、ある化粧品が「使用すると100%しわがなくなる」と宣伝しているものの、実際にはそうした効果が科学的に証明されていない場合です。


景品表示法第5条2号では、「有利誤認表示」を禁止しています。商品やサービスの価格やその他の取引条件が、実際のものや他の事業者の同種・類似商品・サービスに比べて顧客にとって明らかに有利であると誤って認識させる表示です。

たとえば、ある家電製品を「市場最低価格で提供」と宣伝しているものの、実際にはそうではなく、他の多くの店舗でより安い価格で販売されている場合です。「今なら半額」と宣伝しつつ、実際にはそうでない場合も該当します。

メルセデス・ベンツ日本のケースのポイント

今回の事件が起こってしまった要因は、法務部門が、カタログの内容を正確に把握できていなかった点があげられるでしょう。しかし自動車という製品の性質上、法務部門がすべてを把握して修正するのも難しいという意見も上がっております。


メルセデス・ベンツはセダンやSUV、ステーションワゴン、コンパクトカー、クーペ、ミニバンなどさまざまなボディタイプを展開しており、ラインナップも豊富です。1つのボディタイプにいくつものモデルがあり、それぞれのモデルにさまざまなグレードがあり、標準装備もばらばらです。 法務担当者がこれらを一つひとつ確認・修正するのは、現実的な対応とは言い難いでしょう。

まとめ

今回のケースからわかるのは、「法務部門はもちろん、商品知識に詳しい現場の人間も景品表示法を理解しておく必要がある」という点です。どのような対策をが有効であるかは企業によって異なりますが、部門間の連携を強めていくことが、リスク対策の第一歩になるでしょう。


参考サイト
メルセデス・ベンツ日本株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について(消費者庁)