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成長戦略の一環としてM&Aを実施 2023年版中小企業白書

政府は4月28日、2023年版の中小企業白書・小規模企業白書を閣議決定した。新型コロナウイルスや物価高騰、人手不足といった経営課題に直面する中、事業者の持続的な成長に向けて必要な取り組みなどを分析している。白書によると、2022年のM&A件数は過去最多の4304件(前年比24件増)と2年連続で伸びた。

買い手企業の7割超が「売り上げ・市場シェア拡大」期待

買い手企業におけるM&Aの目的は「売り上げ・市場シェア拡大」が74.6%と最多。「人材の獲得」(54.8%)、「新事業展開・異業種への参入」(46.9%)、「取扱製品・サービスの拡大」(43.8%)が続いた。

図 M&Aの目的(買い手)
2023年版 中小企業白書「図2-2-45」より引用

M&Aが企業規模拡大や事業多角化など成長戦略の一環として捉えられている半面、51.6%の企業は「相手先従業員などからの理解が得られるか」に不安を感じている。情報不足や効果が不明瞭な点を障壁に挙げた割合も各30%を超え、デューデリジェンスをはじめとするM&A成立前の取り組みに加え、成立後のPMIを通した円滑な統合が求められている。

一方、2022年の休廃業・解散企業件数(東京商工リサーチ調査分)は前年比11.8%増の4万9625件と2年ぶりに増加。休廃業・解散する直前期の決算で黒字だった企業の割合は54.9%(前年比1.6ポイント減)と2年連続で低下しており、売り手となる企業にとっても経営資源の散逸を防ぐM&Aの重要性が高まっていると言える。

こうした中、事業承継を経た経営者の就任経緯のうち、これまで主体だった親族内承継の割合が低下。2022年は34.0%(前年比0.3ポイント減)で、従業員承継が33.9%(同0.1ポイント増)と肉薄した。さらに、M&Aを中心とした社外への引き継ぎも27.8%(同1.9ポイント増)となっている。

親族内承継類型別の準備期間を見ると、親族内は「5年以上」が最多の29.9%に上る。これに対し、社外は「1年未満」が半数の50.2%、従業員も39.4%を占めている。親族内の準備期間が長い傾向にあるのは、事業承継を決めてから現場経験を積んだり、経営に関する学習を始めたりすることが多いという事情が見て取れる。

承継に対する二極化が進む

事業承継実施企業は売上高成長率が高い

事業承継を実施した企業の承継後9年間の売上高成長率について、同業種の平均値と比較した差分は事業承継後3年目でプラスに転換。9年目は2.1%に広がっている。事業承継実施企業のパフォーマンスが高い傾向にあるのは、世代交代を通じた企業変革や新商品・サービスの提供など事業再構築のきっかけになりやすいことが理由と考えられる。

事業承継実施企業の承継後9年間の売上高成長率
2023年版 中小企業白書「図2-2-12」より引用

後継者不在率が初めて60%を下回る

2022年の後継者不在率は57.2%(前年比4.3ポイント減)で、2011年の調査開始以降初めて60%を下回った。2021年以降は50代、60代の後継者不在率の低下が全体の率を押し下げている。ただ、経営者年齢が70代以上であるにも関わらず後継者が未定の企業も一定数存在し、事業承継が進んでいる企業と進んでいない企業で二極化している。

早期のPMIが期待以上の成果に

中小企業庁は「M&Aで期待以上の満足度を実感している企業ほど、相手先企業への確認事項として『相手先経営者や従業員の人柄・価値観』を重視している。

PMIの検討開始時期別に見たM&Aの満足度
2023年版 中小企業白書「図2-2-49」より引用

M&A成立前の早期の段階からPMIを検討し、事前になどを確認することや、買い手企業と売り手企業の双方でM&Aの目的や戦略を明確化することが重要だと考えられる」としている。

文:M&A Online

関連リンク:2023年版「中小企業白書」(中小企業庁)