◆西武1―4ソフトバンク(14日、ベルーナドーム)
 ソフトバンクの栗原陵矢内野手(27)が、復調へのマルチ安打を放った。6回に5試合ぶり、実に21打席ぶりとなる中前打。8回にも中前へのクリーンヒットをマークした。「苦しかったですね」と険しい表情で振り返った。

 長い、長いトンネルだった。チームが好調の中、まさに蚊帳の外。13日の西武戦で4打数無安打に終わり、ついに打率は0割台に突入していた。それでもスタメンで出続ける苦しさと戦っていた。

 6回2死。髙橋に2球で追い込まれたが、何とか4球目の真っすぐを中前にはじき返した。「なんか久しぶりの感覚でした。とにかく塁に出たいという思いで立っていた。良かったです」。後続も続き、大きな追加点の起点をつくった。

「やっぱり競争の世界ですから」

 8回1死からも中前打を放ち、今季初のマルチ安打。本田の真っすぐにしっかり反応した。「やっぱり2本目は大事だと思っていたので必死にいきました。しっかり芯にボールが当たった」。会心の一打だった。

 生き残りをかけた勝負の一戦とも位置づけられていたようだ。小久保監督は対戦が一巡するまでは打線を大きくいじらない方針を示していた。裏を返せば、この試合で見切られる可能性もあった。指揮官は「今日は内容も結果も求めているところがあったけど、非常にいい形。ちょっと(状態が)上がる兆しが見えたかなという打席には見えました。(入れ替えなども)当然ね、やっぱり競争の世界ですからね。でも、今日の内容を見て、このままもちろん(次カードの)札幌にも当然一緒に行きます」と説明。〝土俵際〟で踏みととどまった形となった。

【次ページに続く】食事を取っていると…

 悩める栗原はチームメートにも救われていた。「昨日、食事を取っていてオスナが僕のところに来て、いろんな言葉をかけてくれました。うれしかったですね」と感謝した。守護神からは「みんなおまえの味方だから。みんなおまえを待っている」と声をかけられた。

 もちろん、2本で全てが解決したわけではない。「ホッとはしていない。これを続けていかないと意味がない。今日1日だけのものにしてはいけない。まだまだだと思っています」。打てない中でもリーグ4位タイの8四球を奪い、三塁守備でも無失策と白星に貢献してきた。バットでも復調のきっかけをつかみ、北の大地に向かう。
(小畑大悟)