[J1第7節]FC東京 2−0 鹿島/4月7日/国立競技場

 国立に5万人以上が詰めかけたFC東京と鹿島の一戦は、FC東京が2−0で勝利した。

 序盤からお互いにすごくコンパクトで、中盤の攻防はめちゃくちゃ激しかった。攻守にインテンシティが高くて、両チームの持ち味がぶつかり合って、見応えは十分だった。

 試合が動いたのは後半。55分、松木のピンポイントクロスを仲川がヘッドで押し込んで、FC東京がリードを奪う。

 松木のクロスは素晴らしかったね。前半は鹿島のプレスにちょっと苦しんでいた印象だったけど、後半は徐々に時間とスペースができてきたなかで、松木も前を向いてプレーする回数が増えた。そして左サイドでキープして、自慢の左足で先制点をお膳立てした。

 あれはたぶん、仲川を狙ったというよりは、あのへんに“落とす”っていう感覚だったんじゃないかな。手前にセンターバックがいるから、浮かして、その裏、みたいな。

 そこまでスピードはなかったけど、あのシチュエーションだと、あんまりボールが速すぎると、中で合わなかったり、キーパーもパンチングしやすかったりする。でも、あのふわっとしたスピードなら、キーパーも出にくいし、仲川もヘディングしやすかったと思う。絶妙だったよね。

 松木はペナの前あたりでボールを持った時のほうが、より怖さを出せるね。原川のチーム2点目も、丁寧なラストパスでアシスト。これからオリンピックの予選を戦うけど、できるだけゴールに近い場所でプレーしてほしい。

 それにしても、松木は国立で勝負強いよね。前節の浦和戦ではボレーを決めているし、何よりも高校時代に選手権で優勝している。国立なら、どの相手でも活躍するんじゃないかな(笑)。
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 あと、目を引いた選手は、左サイドの俵積田。一つひとつのプレーが速くて、今のFC東京のサッカーに求められるタイプのアタッカーだよね。縦への仕掛けで、グッと前に出る。カットインしてクロスも上げられる。ボールの受け方もセンスがあった。

 途中出場の遠藤もスピードがあるし、右サイドの安斎もポテンシャルがありそう。FC東京は若くて面白そうなタレントが揃っていると改めて感じた。

 だから、あとは監督次第かな。特に、両サイドの選手をどうやって活かすか。たとえば、彼らが良い状態で1対1ができるように、チームとしていかに相手の守備を絞らせるような組み立てができるか、とか。

 そのあたりがさらに整備されてきて、個々の力をより引き出せるようになれば、今季のFC東京は注目のチームになりそうだよね。タレントたちを輝かせられるか。その意味では、クラモフスキー監督の手腕に期待したい。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

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