この2月、ゼレンスキー大統領はウクライナ軍の総司令官ザルジニーを更迭し、シルスキーに変えるという大胆な選択を行った。2023年10月以来、ゼレンスキーとザルジニーの対立は先鋭化し、内乱の可能性もあると言われていた。

(図・共同)

しかも、ゼレンスキーが更迭を表明してもザルジニーはそれをすぐに受け入れたわけでなかったからである。それほどザルジニー支持があったともいえる。しかし、ウクライナ軍の総司令官と大統領の間に確執があるのではないかという噂は、とりあえず打ち消された形となった。

ウクライナ軍総司令官の交代

しかし、ゼレンスキー以上に人気があるといわれるザルジニーに代って軍の指揮をとる人物が果たしているのかどうか、という問題は残った。新しい総司令官シルスキーはロシア人であり、ソ連時代のソ連軍の中で育った人物である。

しかも2023年5月のバフムートの敗北の責任者でもあったことで、その任に堪えられるのだろうかという噂があった。

そのシルスキーも、モスクワでプーチンのインタビューが行われている頃、ドイツのZDFのインタビューを受けていた。このインタビューは、クレムリンの豪華な部屋でのプーチンのインタビューとは違い戦地の装甲車の前で軍服のまま行われていた。

戦線の状況についての厳しい問いかけに、静かに、ある意味冷静にシルスキーは答えていた。それは彼の表情からもわかった。戦況は厳しい状況であるが、ウクライナ軍はなんとか耐えていると。そして、今回の戦争は科学的兵器による戦争であるゆえ、NATOの武器援助が是が非でも必要であると述べていた。

しかし気になったのは、「この戦争は2014年から継続している」という答えだった。シルスキーから見ても、この戦争はすでに10年経過しているというのだ。

冒頭で「ウクライナ戦争は、3年目に突入した」と書いたが、当事者の中ではすでに10年も戦っているという意識があるということだ。

それは、とりわけこの2年間の戦争で、大きな戦略上のポイントとなったバフムート(アルチェモスク)やアフディフカなどの、ミンスク合意で定められた国境線上の要塞を巡る攻防線を見るとよくわかる。