首都高の大幹線を2週間通行止めにし、多摩川に架かる橋を架け替える工事がまもなく始まります。既存橋の真横で工事が進む新しい橋桁は9割がた完成していました。

大師橋架け替えで2週間通行止め

 首都高の大規模通行止めを伴う大工事がまもなく始まります。首都高速道路は2023年5月16日(火)、1号羽田線・K1横羽線の「高速大師橋」の架け替え用橋桁を報道陣へ公開しました。

 高速大師橋は開通から50年以上が経過。1日8万台という重交通区間とあって、老朽化により橋の内外に1200か所以上の疲労亀裂が見つかっているといいます。その部分の橋をまるごと新しいものに架け替えるのが今回の事業で、新しい橋桁は、本線の真横で制作されています。

 架け替え工事はいよいよ5月27日(土)から始まります。この日の朝5時から2週間、高速大師橋を含む平和島〜大師などを通行止めにして、既存の橋桁と新しい橋桁を横スライドさせて架け替えるという工事です。

 多摩川の河川敷から新しい橋桁の上にあがってみると、すでに舗装の下層部分が済み、標識類も設置されていました。都県境を示す「神奈川県」の看板(カントリーサイン)が、すぐ横の本線に並んで立っています。ただ、その位置は数メートル、新しい橋桁のもののほうが神奈川側にズレています。

「既存の橋桁を撤去する際は、そのまま上流側の真横へ約30mスライドさせるのですが、新設の橋桁を架ける際には、東京側へ若干斜めにスライドさせます。架設後は現在と同じ位置に(「神奈川県」の)看板がくるようになります」(首都高速道路 更新・建設局 事業推進部長 野網孝之さん)

 これは、多摩川の近くまで建て込んでいる住宅に橋桁をぶつけないための措置だそう。

 ちなみに架け替え区間は約300m(292m)、重量約4000トンで、その長さや重量は「“横倒しにした東京タワー”をスライドさせるようなもの」だそうです。

橋桁のスライド自体は1日あれば終わる…2週間もなにするの?

 橋桁のスライドは、既存橋が6時間、新設橋が12時間をかけて行うといいます。それぞれ1分あたり9cm、4.5cmという移動量でゆっくりと、4000トンもの構造物を動かしていきます。

 とはいえ、新設の橋桁は標識類含めすでに9割がた完成しており、仮にスライドするだけならば1日で済んでしまうと思うかもしれません。2週間も通行止めを行うのはなぜでしょうか。

 まず、架け替えた新設の橋桁の位置を調整し、6か所の新設橋脚へ溶接するのに2日間かかるといいます。これは工期を守るため荒天でも完遂できるよう、完全防護の状態で臨む準備工事がしてありました。

 その後は、新設の橋桁と既存の橋桁の両端をつなぐ作業です。位置を慎重に調整し、端部の隙間を埋める小さな橋桁を別途陸送したうえで架設し、それらを溶接していく必要があるといいます。ちなみに、高速大師橋のうち架け替える約300mの前後の区間は、構造が異なり(PC構造)、健全度としては問題ないことから、そのまま既存のものが使われます。

 その後、壁高欄(欄干)や舗装(上層)、区画線の施工などを行い交通解放となります。通行止め解除は6月10日(土)の朝5時です。

 大幹線である1号線をかつてない2週間という長さで通行止め。これにより、1号線や並行する湾岸線だけでなく、一般道や首都高の広範囲で路線図が真っ赤、つまり渋滞が多発すると予測されています。首都高では期間中にクルマの利用を控えたり、夜間に移動したりするよう呼びかけています。

 それでも、首都高の交通状況としては“かつてない”ほどではなく、1年で最も混む「年度末くらい」と説明しているそうです。とはいえそれが2週間。工事がつつがなく終了することを祈るばかりです。