メジャーリーガーは1200人なのにF1はたった20人! 「なるだけ」でも「超狭き門」の世界だった

この記事をまとめると

■F1の歴史において日本人のフルタイムドライバーは過去37年でたったの10人しか存在しない

■F1ドライバーになるにはFIAが発行するスーパーライセンスが必要となる

■当然ライセンスを取得してもチームから声が掛からなければドライバーにはなれない

F1のシートはたった20しかない

 初の春開催となった、2024F1日本グランプリ。角田裕毅は10位入賞で、2012年の小林可夢偉以来となる日本人ドライバーの母国レースでのポイント獲得となり、大いに湧かせてくれたが、1987年の中嶋悟のデビュー以来、日本人のF1フルタイムドライバーは過去37年でたったの10人(スポット参戦を含め21人)。

 どうしてこれだけ狭き門なのか?

 最大の理由は、F1のシート数が少ないから。現在、F1に参戦しているチームは10チーム。各チームがコンストラクターで、それぞれ2台のマシンを走らせているので、F1のシートに座るのは、世界で20人しか許されていない。

 ほかのスポーツ、たとえば大谷翔平が活躍している、メジャーリーグだと参加チームは30。各球団がメジャーリーグ契約できる選手の上限は40人なので、最大1200人がメジャーリーガーになれる。

 そしてボクシング。モンスター=井上尚弥が4団体王座統一をはたして話題になったとおり、主要団体だけで4団体あり、しかも体重別にミニマム級からヘビー級までの17階級も段階がある。単純計算すると、4団体×17階級で、68人の世界チャンピオンがいるわけで、F1ドライバーよりも3.4倍も多いことに!

 これは数字上の問題なので、F1ドライバーが大リーガーやボクシングの世界チャンピオンより、偉いとか、凄いとかいった話ではないが、F1ドライバーになる困難さはイメージしやすいのではないだろうか。

類まれな技量と集中力を持つF1ドライバー

 また、F1ドライバーになるには特別な資格、FIAが発行するスーパーライセンスが必要になる。

 このスーパーライセンスを新たに取得するには、過去3年間でライセンスポイントを40点以上獲得するか、過去2シーズンに加えて申請年の見込み獲得ポイントの合算が40点以上となるのが原則。

 スーパーライセンスポイントを獲得するにはFIAが指定した各カテゴリーのレースで入賞することが条件で、それぞれフルシーズンの80%以上のイベントに出走する事が欠かせない。

 付与されるポイントもレースカテゴリーと順位によって違い、例えばFIA F2選手権やインディカーなら優勝1回で40点。日本のスーパーフォーミュラなら、優勝1回で25点。各国F3選手権だと優勝1回で10点。スーパーGTだと優勝1回で20点といった具合。

 このスーパーライセンスをもっていることは、F1ドライバーとしての最低条件なので、スーパーライセンスをもっていようが、下位カテゴリーでチャンピオンを獲ろうが、F1チームからお呼びがかからなければF1ドライバーにはなることができない。

 というわけで、F1ドライバーになるためには、まず速さが必要なのはいうまでもないが、それ以外にF1のジュニアチームの出身だったり、自動車メーカーのバックアップや強力なスポンサー、持参金の多寡、知名度、人気などのさまざまな要素も絡んでくる。

 ただし、本当に飛び抜けたパフォーマンスを持っていればハナシは別。

 現役世界チャンピオンのマックス・フェルスタッペンは、2015年に史上最年少、17歳でF1にデビューし、彼の登場以降、スーパーライセンスの発給は「18歳以上」という年齢制限が加わったほど。

 また、2007年の世界チャンピオン、キミ・ライコネンは、ジュニアフォーミュラ(フォーミュラ・ルノー)で23戦しただけで、F1ドライバーに抜擢。F3の経験すらなかったので、スーパーライセンスは当初4戦限定の仮ライセンスとして発給された(F1デビュー戦で6位入賞を果たし、正式なライセンスが降りた)。

 いずれにせよ、2024年の日本グランプリの予選を見ても、約6kmの鈴鹿サーキットを走って、トップ8は0.589秒以内の差でしのぎを削るとんでもない世界なので、F1ドライバーの技量、集中力は凄まじいレベルにあることは間違いない。