2025/4/10 17:50

『びっくりドンキー』過去最高に

びっくりドンキーAmazon

1枚の木の皿にハンバーグやライス、サラダを載せた「ワンプレート」の料理が人気の「びっくりドンキー」。毎年行われる日本生産性本部による「顧客満足度調査(飲食業種)」で常に上位ランクインしており、業績も好調だ。直近期(2024年3月期)の決算では過去最高益を記録している。少し前には、ある店舗で2台の猫型配膳ロボットが通路で向かい合って止まり“ケンカ”をする様子がXで紹介され、“ほっこりするシーン”だとして話題となっていた。実はびっくりドンキーは配膳ロボット導入をはじめとしてDX活用に積極的に取り組んでいる外食チェーンの一つでもある。今回は運営会社であるアレフに、具体的なDX戦略、さらには今後の商品展開・店舗計画について聞いた。

──猫型配膳ロボット同士が“ケンカ”をする様子が、非常に「ほっこり」するシーンだとXで話題となっていました。

 今回は非常に稀なケースでしたが、Xを投稿された方がすぐに従業員を呼んでいただいたんですね。このため、特にトラブルもなく、すぐにお客様のところに食事をお届けすることができました。まずはこの場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。


 現在、「びっくりドンキー」は全国に345店舗ありますが、配膳ロボットはこのうちの約4割にあたる141店舗に導入されています。導入の目的は「お客様の利便性向上」です。商品をお届けする時間を短くして、出来たての商品をお届けすることが一番の目的です。

 配膳ロボットの導入に際しては、様々な条件を設定して決めています。その中の一つに「安全性の考慮」という項目があって、「一定の通路幅を確保できている」などの条件を満たした店舗だけに導入しています。

──配膳ロボットについて他にも何かこだわった部分はあるのでしょうか。

「お客様の利便性向上」という点において、商品の取りやすさにこだわりました。お客様が座ったままでも商品を取れる機種を選定しています。1台で1度に複数卓の料理を運ぶと、座ったままでは商品を取り出すことができないため、当店では1卓ずつ運ばせるようなオペレーションをしています。

 さらに独自の仕様として走行音にもこだわりました。「びっくりドンキー」の雰囲気に合うように、カウベルという打楽器の音をベースにした耳に優しい心地よく響く音色に変更しています。この音楽は当店向けにカスタマイズしたものです。

ワクワクする演出を取り入れる

──配膳ロボット以外にもシステム投資の取り組みをされているのでしょうか。

 客席でのタブレットオーダーと自動精算機を組み合わせたシステム、スマートフォン専用のWEB来店予約システムなどを展開しています。


 タブレットオーダーシステムは、現在、全体の7割にあたる約230店に導入しています。「びっくりドンキー」では以前から木製のメニューがお客様に親しまれていましたが、タブレットオーダーを導入した店舗ではこの木製のメニューを廃止しました。

 いずれの店舗でも好評ですね。タブレットを導入した店舗で、従来の木製のメニューに戻したお店はありません。「お客様の利便性」を第一に考えて変えるべきところは変えていくつもりです。

 ただし「びっくりドンキー」の特長であるワクワク感を大事にしたいので、タブレットの画面にもそういった演出を工夫しています。お客様が来店された人数をタブレットに入力すると、木製メニューの扉が開くアニメーションを入れています。そういった遊び心というか、ワクワクする演出を取り入れながら、タブレットオーダーシステムを増やしています。

──実際にこれらのシステムを導入した結果、どのような効果があったのでしょうか。

 お客様からは、「オーダー時や会計時に待たなくて済む」「席に着いてから商品が届くまでの時間が圧倒的に短くなった」「トッピングや追加のオーダーがしやすい」といった声をいただいています。

 例えば従来の木製メニューだと、チーズバーグディッシュにはエッグなどがトッピングできないと思われていたんですね。しかしタブレットだと、「トッピングしますか」という表示が出るので、お客様も「そうか。トッピングできるんだ。じゃあ頼もう」ということになるのです。木製のメニューでは伝えきれなかったことが、デジタルの力を使えばより多くのことをお客様に伝えられる。そういった意味ではデジタルの力は本当に大きいですね。

 また、タブレットオーダーシステムを導入した店舗では、従業員を呼ぶ「ピンポーン」というベルスターを一切なくしました。その結果、「落ち着いて食事ができるようになった」といった声もいただいています。

 これらのシステムの導入効果により、お客様をお待たせしなくて済むようになりました。その結果、導入した店舗ではお客様の数が増えています。

「デジタルによる効率化」と「人によるおもてなし」

──今後のDX戦略についてはどのように考えられていますか。

 お客様の利便性を考えるとデジタル化の流れは不可欠なので、今後も積極的に進めていくことになると思います。その一方で、お客様からは「びっくりドンキー」に対して、「あたたかいおもてなし」も求められていると感じています。


 ですので「デジタルによる効率化」と「人によるおもてなし」、それぞれの強みを活かすことが大事ですね。来店していただいたお客様に、「便利だよね」とか「来てよかったね」と思ってもらえるように、お客様一人ひとりに寄り添ったサービスを提供していきたいと考えています。そういった意味では、これからは人の部分がより一層重要になってくるのではないでしょうか。お客様の満足度を最大化するためには、やはり人の部分が非常に大きな役割を担うと思います。

──今後もハンバーグを中心とした商品展開をされていくのでしょうか。

 1968年の創業以来、当社はずっとハンバーグにこだわり続けてきました。その結果、個性となったこの路線は今後も変わらないと思います。ただし、お客様がさらに利用しやすくなるように変化していく必要があると考えています。

 具体的には商品の品揃えです。例えば、「びっくりドンキー」は昼や夜に利用されるイメージが強かったと思いますが、朝の時間帯も利用できるようにモーニングメニューを追加しました。少し前までは、「びっくりドンキーでモーニング?」と思われていましたが、ハンバーグだけでなくトーストや卵かけご飯などメニューの選択肢を増やすことで多くの方に利用していただいています。既に全体の約87%にあたる300店でモーニング営業を展開しています。

──今後の店舗拡大をどのように考えていますか。例えば海外展開などの構想はあるのでしょうか。

 今後もより広く当社のサービスを提供していくために、これまではあまりなかった都市部への出店も進めているところです。昨年は新宿靖国通りと府中けやき通りに2店舗を出店しています。直近では、4月に大阪市内の京橋コムズガーデン店がオープンする予定です。

 過去最高の店舗数(345店)となっていますが、当面は海外への出店は考えていません。「日本国内でより成長を目指したい、より多くのお客様に商品とサービスをお届けしたい」と考えています。今後も、「より豊かで便利な食をお届けする」という姿勢を守り、継続的な成長を目指していきます。

ビジネスジャーナルが報じた。

びっくりドンキー、過去最高益を支える先進的な店舗DX戦略…顧客の利便性第一 | ビジネスジャーナルびっくりドンキー、過去最高益を支える先進的な店舗DX戦略…顧客の利便性第一 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部