ゴルフ場ではカートを利用して移動することが多いですが、あえて近い距離では徒歩を選択することで、どのような利点があるのでしょうか。

カートに乗るより歩いたほうがプレーファストにつながることも

 プロのトーナメントでは、カートに乗って移動するシーンはほとんど見る機会がありません。しかしアマチュアの一般的なラウンドにおいては、河川敷などの一部を除けばカートを利用するのが一般的となっています。

アマチュアゴルファーのラウンドではカート移動が一般的
アマチュアゴルファーのラウンドではカート移動が一般的

 カートのおかげでゴルフ場全体の人が滞りなく移動できている側面もあり、徒歩で移動することに対してあまり利点は感じられないと考える人もいるかもしれません。

 今では日本のゴルフの定番と化している「カート移動」ですが、近い距離であればあえて歩きを選択するのはアリなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「特にビギナーの場合は飛距離を稼ぐことが難しいので、ボールが落ちたところまで歩いて移動する機会も多いでしょう。パッティングを終えて次のホールまで移動する際にも、カートに乗らないでそのまま歩いてしまった方が速いこともよくあると思います」

「また、一回一回全員がカートに乗り込むのも面倒でしょうし、発進した勢いで同伴者が落ちないように声をかけたり、落とし物がないかどうか周囲を確認したりと、安全に運転するためには色々とチェックしなければならないポイントがあります」

「基本的にカートに乗れば速く移動できますが、ケースバイケースで乗らない方がスムーズに目的地まで向かえると判断した際や、乗り降りするごとに中腰になったり座席の横移動をしたりするのが煩わしい時は、徒歩を選択するのもいいでしょう。最近のカートは、運転のために乗り込まなくてもリモコンで操作すれば電磁誘導で自動走行してくれるものも増えているので、そのような機能を積極的に活用すれば、プレーに直接関わらない場面でも所要時間が短縮できて、スロープレーの防止が見込めると思います」

 カートに乗り降りする時の姿勢は、人によっては意外ときついと感じる場合もあります。いっそのこと近距離なら歩いてしまえば、体にかかる負担も減らせるかもしれません。

ちなみに徒歩で移動する時はこんなことに注意

 では、歩いて移動する際はどのような点に注意したほうがいいのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「カートに戻る回数が減るとなれば、必然的にキャディーバッグからのクラブの出し入れをはじめ、残りの距離や状況に応じたクラブ選択の回数も減ることになります。たとえば、フェアウェイから直接グリーンオンを狙おうとしたにも関わらず、ミスをしてショートしたりバンカーに入ってしまった時には、別でアプローチウェッジやサンドウェッジを用意しなければなりません。しばらくカートに戻るつもりがないのであれば、事前にミスショットした時のことを考えて予備のクラブを何本かまとめて持っていった方が、クラブを選び直すのに余計な時間がかかるリスクを減らせます」

「グリーンの近くまで来た際には、まだボールがグリーンに乗っていなくてもパターを準備して持っていけば、時間や動線の削減につながると思います。同伴者がアプローチなどで手こずってパターを取りにいく余裕がないようなら、代わりにその人のパターも一緒に出してあげれば同伴者の手間も減らせるはずです。ただ、グリーン周りではアプローチに使ったウェッジなどの忘れ物が多いので、ホールアウトしたら忘れ物がないかどうかだけは入念に確認しておくといいでしょう」

 さらに、近距離でも歩いて移動することによって、各ホールの芝の状況を把握できるというメリットも考えられると飯島氏は語ります。

「通常ラフには野芝が使用されていますが、ごく一部では『ティフトン芝』と呼ばれる全く性質の異なるものが混ざっていることがあります。ティフトン芝は、野芝や高麗芝をはじめとしたメジャーな芝と比較してボールが沈みやすく、中に食い込んでしまう特徴を持っています」

「そのため、インパクトの瞬間にボールとクラブのフェースとの間に絡みついてきてミスショットが誘発されやすく、プロや上級者でも苦しめられることが多い芝として有名です。万が一、野芝などと同じ感覚で打ってしまうと思いもよらないミスにつながる可能性があるので、少しの距離でも歩いてみると芝の生え方も観察できるでしょう」

 カートを利用すればビギナーでも楽しくスムーズにラウンドできますが、場合によっては歩いて移動した方が利点が多いこともあります。カートと徒歩を上手に使い分け、自分のペースに合ったラウンドを楽しめるようになるといいでしょう。

ピーコックブルー