今シーズン、マスターズ覇者スコッティ・シェフラーやローリー・マキロイも使用している「Qi10 ドライバー」は、シリーズのなかでは中間的な性能のモデルと位置づけられています。この最新モデルと前作にあたる「ステルス2 ドライバー」をゴルフライターの鶴原弘高が試打比較しました。前作からどこが進化していて、どのように変わっているのでしょうか。

新作はスタンダードモデルもヘッドが大きく、やさしそうに見える

「Qi10」シリーズのドライバーには、「Qi10 MAX」「Qi10」「Qi10 LS」、そして公式ショップのみで追加発売された「Qi10 MAX LITE」の4モデルが展開されています。「Qi10 MAX LITE」はMAXの軽量版なので、ヘッド設計や弾道に違いがありそうなのは3モデルということになります。

左がテーラーメイド新作「Qi10ドライバー」、右が前作「ステルス2ドライバー」
左がテーラーメイド新作「Qi10ドライバー」、右が前作「ステルス2ドライバー」

 スコッティ・シェフラーが使用してマスターズ2勝目を成し遂げた「Qi10 ドライバー」は、MAXよりもヘッドが小ぶりで洋ナシ型、それでいてLSよりもヘッド後方が大きくふくらんだヘッド形状になっています。ヘッドの見た目でも、MAXとLSの間にあたる存在であることが分かります。

 前作の「ステルス2 ドライバー」も同じ立ち位置のモデルでしたが、ヘッド形状は「ステルス2 プラス ドライバー」とほとんど変わらず、面長で小ぶりに見える洋ナシ型をしていました。

左の「Qi10 ドライバー」のほうがやさしさを感じさせる形状
左の「Qi10 ドライバー」のほうがやさしさを感じさせる形状

 2つのモデルを構え比べてみると、あきらかに「Qi10 ドライバー」のほうが投影面積は大きく、ヘッド後方側が長くなったぶんシャローにも感じられます。また、バルジ(フェース横方向の丸み)も「Qi10 ドライバー」のほうが少なく見えて、「ステルス2 ドライバー」よりも球をつかまえやすそうな雰囲気があります。どちらがやさしく打てそうかと問われると、間違いなく「Qi10 ドライバー」のほうです。

弾道に大きな差はないが「Qi10」のヘッドには重心の深さを感じる

 2つのモデルを同一のスペック(ロフト角9度、標準シャフトのフレックスS)で弾道計測しながら打ち比べました。

弾道の傾向は似通っているが、「Qi10 ドライバー」のほうがやさしく同様の球を打てる
弾道の傾向は似通っているが、「Qi10 ドライバー」のほうがやさしく同様の球を打てる

「Qi10」は、ダウンスイングでヘッド後方側のウエートの重さが感じられ、ヘッドが深重心化されていることが手に伝わってきます。「ステルス2」にもヘッド最後部にウエートが搭載されていますが、スイング中に「Qi10」ほどの重さは感じません。このフィーリングの違いがけっこう大きいです。著者には「ステルス2 ドライバー」のほうがニュートラルな振り心地に感じられましたが、これはゴルファーによって好みが分かれるところでしょう。

 弾道計測してみると、2モデルには大きな差がありませんでした。「Qi10」のほうが少し球が上がりやすく、球をつかまえやすいかなというぐらいです。そういう意味では若干やさしく打てるようにはなっています。打点のズレや方向性に関しての寛容性は、こちらも若干ですが、「Qi10」のほうが上かなという印象です。

 新旧モデルともに「Qi10 MAX」や「ステルス2 HD」よりもスピン量が抑えられ、「Qi10 LS」や前作「ステルス2 プラス」よりもスピンが入ります。どちらのモデルも適度な打ち出し角と標準的な低スピン弾道を得やすいモデルといえそうです。

どちらのモデルもアスリート向けの操作性を備える

 ヘッドの見た目では、新作「Qi10」のほうがやさしく打てそうに感じられるし、実際にボールを打っていても、「Qi10」には重心の深さを感じられます。けれど、不思議なことにヘッドの操作性は「ステルス2」と同レベルです。ゴルファーが意図したとおりに球を自在に曲げやすい性能を備えていて、そのあたりは前作「ステルス2」から変わっていません。

 要するに、新作「Qi10」もアスリートに好まれるヘッド性能のドライバーです。同シリーズのMAXの低スピン版というよりは、LSのスピン量を増やして、ヘッドの機敏な動きを少しだけ減らしたバージョンと評するほうが適切でしょう。

 もともとの球筋やスピン量にもよりますが、アスリートによってはLSよりもスピンが増えることで弾道安定性が向上できるうえに、より球を曲げやすくなるというメリットも生じます。今シーズン、ローリー・マキロイが使用しているのもおそらくそういった理由からだと思われます。

 アマチュアに使いこなせない性能かと問われると、決してそんなことはありませんが、打点ズレによる寛容性を求めながらも、操作性も重視したい人向けのモデルではあります。

試打・文/鶴原弘高つるはら・ひろたか/1974年生まれ。大阪出身。ゴルフ専門の編集者兼ライター。仕事のジャンルは、新製品の試打レポート、ゴルフコース紹介、トレンド情報発信など幅広く、なかでもゴルフクラブ関連の取材が多い。現在はゴルフ動画の出演者としても活躍中。ギア好きゴルファーの会員制コミュニティサイト『3up CLUB』(https://3up.club/)では、配信される動画のキャスター兼編集長を務めている。Instagram:@tsuruhara_hirotaka

【取材協力】フライトスコープジャパン

「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボール
「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボール

今回の取材はフライトスコープジャパン本社内のパフォーマンススタジオをお借りし、「FlightScope MEVO Range」と「Pro V1 RCT」ボールを用いて計測を行いました。公式サイトhttps://flightscope.co.jp/

鶴原弘高