●ブライトンがEL出場権を獲得

 プレミアリーグ第32節延期分、ブライトン対マンチェスター・シティが現地時間24日に行われ、1-1の引き分けに終わっている。試合後のレーティングではワーストの評価となった三笘薫だったが、それでもプレー内容は全く悲観する必要のないものだった。その理由とは(文:安洋一郎)

 ブライトンが目標としていたUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場を確定させた。

 三笘薫を擁するチームは今季のホーム最終戦でプレミアリーグ王者マンチェスター・シティと対戦し、1-1と引き分けた。その結果、アストン・ヴィラとの最終節を前に6位でのフィニッシュが決まっている。

 この試合は両チームともにフルメンバーではなく、ターンオーバーを敢行。ブライトンはルイス・ダンクやアレクシス・マクアリスター、エヴァン・ファーガソンらがベンチスタートとなり、マンチェスター・シティはジャック・グリーリッシュやルベン・ディアス、マヌエル・アカンジらをベンチからも外した。

 すでに優勝を確定させているアウェイチームは、ジョゼップ・グアルディオラ監督が色々試したかったことを行った試合だった。リコ・ルイスの偽SBや不動のアンカーであるロドリをCBとして出場させるなど、スペイン人指揮官は勝敗よりも内容を重視した立ち回りを行った。

 そのため来季マンチェスター・シティでプレーするかどうか不透明なアイメリク・ラポルテもベンチ外とするなど、今季後半戦の強みとしていた後ろ4枚が全員CBという最適解を封じてこの試合に臨んだ。

 こうした影響もあってか、ややオープンな展開となり、シュートはブライトンが20本(枠内7本)と13本(枠内4本)のアウェイチームを大きく上回る結果に。最終的なスコアは1-1の引き分けだったが、両チームともにゴールが取り消されるなど、どちらが勝ってもおかしくない展開だった。

 両チームともにターンオーバーを敢行した試合でも先発に名を連ねた三笘薫だったが、データサイト『Sofa Score』でのレーティングは、前節に続きワースト評価に。「6.1」という評価は、この試合に出場した30人の選手で最低の数字だった。

 なぜ日本代表FWの評価は伸び悩んだのだろうか。

●三笘薫が最低評価となった理由

 三笘の評価がワーストとなった最大の理由は、前節同様に決定機を逃したことにあるだろう。

 最大のチャンスは31分のシーン。CKからダニー・ウェルベックの落としを体ごとゴールに押し込んだが、ゴールラインを割る瞬間にラグビーのトライのようにボールを抱きかかえてしまい、ハンドの判定を取られた。

 この試合を通じて三笘はチーム最多の5本のシュートを記録。しかし、いずれも決めることができず、第29節ブレントフォード戦以降、27本連続でゴールを逃す結果となっている。

 もう一つ、三笘の評価が伸び悩んだ理由がカイル・ウォーカーに対して、自身最大の持ち味であるドリブルを消されたことだ。今節対峙したイングランド代表DFはスピード、フィジカル、駆け引きのどれもが一線級で、先週に行われたレアル・マドリードとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)ではヴィニシウス・ジュニオールを完封していた。

 ウォーカーは対三笘に対しても、常に自分の間合いで距離を縮め、守備範囲に入ってきたらボールを刈り取るという得意な形で立ちはだかった。

 この世界屈指の右SBを前に三笘は苦戦し、地上戦は13戦4勝、ボールロストは両チームでワーストの13回と苦しいスタッツに終わった。

●持ち味を消された中でもみせた工夫

 先述した通り、三笘は決定力不足とドリブルが封じられるという苦しい状況であったことは確かだが、試合から消えていたわけではない。

 ドリブルでウォーカーを抜くことが難しいと判断した日本代表FWは、パスでいつも以上に周りの選手を使った。その代表例が44分の場面だろう。本来であれば縦に仕掛けて深い位置を取りに行く場面で、三笘は相手のハイラインの裏を突いて、スペースに抜け出していたウェルベックへとスルーパス。元イングランド代表FWは絶妙なシュートでネットを揺らしたが、オフサイドの判定に。もう少しタイミングが合っていればゴールという紙一重のシーンだった。

 前半終了間際の45+3分にも三笘はウォーカー相手にドリブルで抜くのではなく、その背後に抜け出したフリオ・エンシソへとスルーパス。ウェルベックのシュートを演出している。

 このように三笘はドリブルの選択肢が封じられた中でも、自身を囮に使うという工夫を凝らすことで相手を攻略しようとプレースタイルを変えていた。

 また守備の意識も強く、9分にはイルカイ・ギュンドアンからプレスバックをしてボールを奪い、ショートカウンターの起点となった。この試合を通じて三笘はタックル数、インターセプト数はともにチーム2位の2回であり、前線からの守備でチャンスを作っている。

 長所を消されても他のプレーで補う。ドリブラーでありながら、プレーの選択肢が多いことがこの日本代表FWの長所と言えるだろう。確かにゴールとアシストはなく、決定機逸やボールを奪われるシーンもあったが、強敵相手にさまざまな策を持って挑めた試合であり、ワーストというレーティングは全く悲観する必要はない。

(文:安洋一郎)