2023年シーズンのF1は序盤の5戦を消化したが、ここまでレッドブル・レーシングが圧倒的な強さを誇っている。彼らは5戦全てで勝利しており、そのうち4回がワンツーフィニッシュ。残る18レースでもこの勢いを継続していれば、F1の歴史を塗り変えるような記録的シーズンとなる可能性がある。

 今季のレッドブルは、ドライバーズ選手権2連覇中のマックス・フェルスタッペンと、ベテランのセルジオ・ペレスのコンビで、結成3シーズン目。パワーユニットはここ数年のタイトルを支えてきたホンダRBPT製で、まさに盤石のパッケージとなっている。

 彼らは開幕戦バーレーンGPでフロントロウスタートからそのままワンツーフィニッシュを達成。第2戦サウジアラビアGPではペレスがポールトゥウィンを成し遂げ、フェルスタッペンは15番手スタートから2位まで追い上げてみせた。波乱となった第3戦オーストラリアGPでもフェルスタッペンが優勝し、ペレスはピットレーンスタートながら5位、第4戦アゼルバイジャンGPでは予選最速こそフェラーリのシャルル・ルクレールに譲ったが、スプリント、決勝レース共に“市街地マイスター”のペレスが制してフェルスタッペンとのワンツーを決めた。

 そして第5戦マイアミGPでも、レッドブルはワンツー体制でフィニッシュ。しかも優勝したフェルスタッペンは9番グリッドからの逆転だった。ここまで5戦5勝、4ポールポジションという記録もさることながら、セーフティカーランのままチェッカーとなったオーストラリアを除いた全てのレースで、3番手以下のライバルに対して20秒前後のリードを築いてワンツーフィニッシュしている点も、今季のレッドブルの支配的な強さを示している。

 もちろん、レースには不確定要素が多く絡むため、彼らが残る全レースをワンツーで終えるのは難しいと言わざるを得ない。ただ、それに近い成績を残す可能性が高いのは確かだろう。F1の歴史の中では特定の1チームが他を寄せ付けない成績を残したシーズンがいくつかあるが、今回はその中から8つの例を紹介しよう。

■1950年:アルファロメオ

ドライバー:ファン・マヌエル・ファンジオ、ジュゼッペ・ファリーナ、ルイジ・ファジオーリ他
ポールポジション:6回/7戦(85.7%)
優勝:6回/7戦(85.7%)
ワンツー:4回/7戦(57.1%)

 1950年はF1が世界選手権となった最初のシーズン。この年はアルファロメオ勢が他を圧倒し、7戦中6勝……記録上はそうなっているが、彼らが唯一優勝していないレースはインディ500である。当時はインディ500が、参戦ドライバーやマシンなどがF1のそれと大きく異なるにもかかわらず、“F1世界選手権”の1戦としてカウントされていた時代。それを鑑みると、実質的なアルファロメオの全勝と言っていいシーズンだった。

■1952年:フェラーリ

ドライバー:アルベルト・アスカリ、ジュゼッペ・ファリーナ、ピエロ・タルッフィ他
ポールポジション:7回/8戦(87.5%)
優勝:7回/8戦(87.5%)
ワンツー:5回/8戦(62.5%)

 アルファロメオの撤退を受けてF2規則下で開催された1952年シーズンを圧倒したのはフェラーリだった。アスカリは第3戦以降全勝してタイトルを獲得。また1950年同様にインディ500を除外して考えれば、フェラーリの全戦優勝であった。

■1988年:マクラーレン

ドライバー:アイルトン・セナ、アラン・プロスト
ポールポジション:15回/16戦(93.7%)
優勝:15回/16戦(93.7%)
ワンツー:10回/16戦(62.5%)

 あまりにも有名な、マクラーレン・ホンダの“セナプロ”による16戦15勝。プロストがトラブルで、セナが周回遅れとの接触で戦線離脱したイタリアGPが唯一土をつけたレースとなった。勝率はなんと93%で、これは未だ破られていない。そして10回のワンツーフィニッシュも、当時の完走率の低さを考えれば驚異的な記録である。

■2002年:フェラーリ

ドライバー:ミハエル・シューマッハー、ルーベンス・バリチェロ
ポールポジション:10回/17戦(58.8%)
優勝:15回/17戦(88.2%)
ワンツー:9回/17戦(52.9%)

 長く続いたフェラーリの“シューマッハー王朝”の中でも、特に支配的な活躍を見せたシーズンのひとつ。予選に関しては、ウイリアムズのファン・パブロ・モントーヤが際立った速さを見せたため、PP率は6割弱となっているが、決勝ではシューマッハーが11勝&全戦表彰台の離れ業。バリチェロも4勝を挙げてワンツーは9回を数えた。



■2004年:フェラーリ

ドライバー:ミハエル・シューマッハー、ルーベンス・バリチェロ
ポールポジション:12回/18戦(66.6%)
優勝:15回/18戦(83.3%)
ワンツー:8回/18戦(44.4%)

 シューマッハーがタイトルを獲得した最後のシーズンでもある2004年は、シューマッハーが開幕5連勝からモナコでのリタイアを挟んで7連勝、13戦12勝を記録するなど圧倒的な強さを見せた。その後の5レースでもシューマッハーが1勝、バリチェロが2勝を記録し、ドライバーズ選手権5連覇、コンストラクターズ選手権6連覇を成し遂げた。

■2014年:メルセデス

ドライバー:ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ
ポールポジション:18回/19戦(94.7%)
優勝:16回/19戦(84.2%)
ワンツー:11回/19戦(57.8%)

 前人未到のコンストラクターズ8連覇を達成することになるメルセデスが、その最初の一歩を踏み出したシーズン。新レギュレーション下でまさに敵なし状態となり、レッドブルのダニエル・リカルドが3勝を記録したものの、それ以外は全てハミルトンかロズベルグが勝利。長らく破られていなかったセナプロのワンツー記録も26年ぶりに更新した。

■2015年:メルセデス

ドライバー:ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ
ポールポジション:18回/19戦(94.7%)
優勝:16回/19戦(84.2%)
ワンツー:12回/19戦(63.1%)

 前年の勢いそのままに、メルセデスがシーズンを制圧。ワンツーは歴代最多を更新する12回だった。ちなみにこの年はフェラーリ移籍初年度のセバスチャン・ベッテルが彼らに食らい付き、メルセデスが逃した1回のポール、3回の優勝は全て彼によるものだった。ハミルトン+ロズベルグ+ベッテルという表彰台の顔ぶれは実に9回を数え、変わりばえのないレース結果が続いた。

■2016年:メルセデス

ドライバー:ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ
ポールポジション:20回/21戦(95.2%)
優勝:19回/21戦(90.4%)
ワンツー:8回/21戦(38.0%)

 この年のメルセデスはワンツーの回数こそ減ったものの、勝率はついに90%超え。2台が1周目に同士討ちしたスペインと、首位のハミルトンがトラブルに見舞われたマレーシアが数少ない敗戦レースとなった。