写真はイメージです(東京・西新宿の副都心)

国内の上場企業によるM&Aは2024年も活況を呈している。1〜3月のM&A件数は合計315件(適時開示ベース)と前年を40件上回り、2年連続の年間1000件の大台達成に向けて上々の滑り出しを見せた。では、”第1コーナー“を終えた段階で、最も多くのM&Aを手がけたのはどこだったのか。

KPPグループ、早くも前年4件に並ぶ

1〜3月の全M&A315件(買収側と売却側の双方が発表したケースは買収側でカウント)のうち、1社で複数(2件以上)のM&Aに取り組んだ上場企業は33社で、件数にして計71件。244社は期間中に1件だった。

件数トップは紙専門商社最大手のKPPグループホールディングスの4件。いずれも海外企業の買収で、ポルトガル、イタリア、オーストラリア、ラトビアでパッケージ(包装資材)製品などの販売会社を傘下に収めた。

KPPグループは2023年もカナダ、スペイン、ポーランド、オーストラリアで年間4件の買収を手がけたが、1〜3月で早くも前年件数に並んだ。

同社は現在の第3次中期経営計画(2023年3月期〜25年3月期)で、紙や板紙などを販売する従来型事業の強化に加え、パッケージ事業や広告関連を中心とするビジュアルコミュニケーション事業の取り込みによる事業ポートフォリオの多角化を掲げており、その手立ての一つが積極的な海外M&A戦略だ。2022年以降、海外企業の買収は10件に上る。

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大栄環境、女子プロサッカーを子会社化

1〜3月中に3件はCAC Holdings、ラストワンマイル、大栄環境の3社で、こちらもすべて買収案件だった。

なかでも注目を集めたのは廃棄物処理やリサイクル事業を手がける大栄環境。3月、女子プロサッカーの名門クラブ「INAC神戸レオネッサ」の運営会社(神戸市)の全株式を取得し、子会社化した。大栄環境は神戸市に本社を構え、地元のスポーツ振興を目的にスポンサーに名乗りを上げた。

電力・ガス料金、宅配水などの取次販売を手がけるラストワンマイルは4月に入り、マンション向けインターネット事業のCITV(東京都千代田区)の子会社化を発表。これにより、今年のM&A件数はトータル4件となり、現時点(4月17日)でKPPグループと並ぶ形だ。

2件は29社を数えた。Fast Fitness Japanとエランは海外展開にアクセルを踏み込んだ。Fast Fitness Japanは米国発24時間ジム「エニタイム・フィットネス」を運営するが、ドイツ、シンガポールの企業を傘下に収め、現地での店舗展開に乗り出す。

エランは病院向けランドリー(洗濯)サービスのベトナム企業2社の買収を決めた。海外進出はインドに次ぐ2カ国目となる。

一方、手がけた2件のM&Aが売却だったのはトヨタ紡織、JFLAホールディングス、THE WHY HOW DO COMPANYの3社。いずれも非中核事業の切り離しなどを目的としている。

トヨタ紡織は自動車用内装材製造の中国子会社と国内子会社をそれぞれ香港企業、ドイツ企業に売却することを決めた。JFLAは子会社で手がける醤油・調味料製造事業などの売却を発表した。

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目下 GENDAは2件、SHIFTはゼロ

2023年はソフトウエアテスト事業のSHIFTとアミューズメント施設運営のGENDAが年間10件でトップを分け合ったが、今年はどうか。

GENDAは1月にカラオケボックス「カラオケBanBan」(全国約370店舗)を展開するシン・コーポレーション(東京都新宿区)、九州で手広くアミューズメント施設を運営するサンダイ(北九州市)の2社の買収を発表した。これに対し、SHIFTは目下ゼロだが、M&Aの積極路線に変化はなく、今後、動きが出てきそうだ。

◎2024年1〜3月:上場企業別のM&A件数(適時開示ベース)

4社KPPグループホールディングス
3社CAC Holdings、大栄環境、ラストワンマイル
2社Fast Fitness Japan、GENDA、JFLAホールディングス、小野建、クスリのアオキホールディングス、コロワイド、トヨタ紡織、ユーグレナなど29社

文:M&A Online

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