[J1第14節]鹿島1−1FC東京/5月20日/県立カシマサッカースタジアム

 鹿島アントラーズの「背番号37」が奮闘中だ。

 J1第9節のアルビレックス新潟戦(2−0)から直近のFC東京戦まで、6試合連続スタメン出場。ガムシャラで、献身的で、見る者の胸を打つプレーで、チームに活力をもたらしているのが、クラブ生え抜きFWの垣田裕暉だ。

 ひたむきさや泥臭さは身上ながら、もちろんそれだけではない。確かな結果を出すことで、自身の存在価値を高めている。

 クラブ史上初の6試合連続のクリーンシート勝利なるか、と大いに話題を振りまいたFC東京戦では、立ち上がり6分にうれしい先制点をマーク。左SBの安西幸輝からのピンポイントクロスを頭でとらえた。プロ8年目にして初めてとなる地元カシマスタジアムでのゴールというのもあり、「特別な1点になった」と喜びもひとしおだった。

 実は“初ゴール”への伏線があった。開始わずか26秒、右サイドからのロングフィードをペナルティエリア左手前で垣田がいったん収め、外に開いていた仲間隼斗に預けると、すぐさまゴール方向にダッシュ。リターンパスを呼び込み、ジャンプ一番、ヘッドで狙った。いきなりの得点とはいかなかったものの、“次こそ”を予感させていた。

「自分の役割は前線での守備はもちろん、相手の嫌がるスペースを見つけて動き回り、ボールを受けたら、しっかりタメを作って、味方につなぐこと。そのなかで、できるだけ多くのゴールを決めて、チームの勝利に貢献したい」(垣田)
 
 シュートに至るまでの駆け引きやスキル面では、まだまだ改善の余地があるだろう。だが、それはFWとしての伸びしろを意味している。「もっと練習しないと」と、不断の努力を惜しまず、J1でのキャリアハイとなる“二桁”を目ざす。

 今季の初ゴールはチーム好転の分岐点となった新潟戦だった。26分、ゴール中央でボールを収め、丁寧なパスで鈴木優磨に残し、状況を静観。相手守備陣がいっせいに鈴木に引きつけられたのもあるが、バックステップでフリーになると、鈴木からの浮き球リターンパスに反応し、身体を倒しながら左足ボレーで決めてみせた。

「プロになって鹿島のエンブレムを着けたユニフォームで、ゴールを決めたいと子どものころからずっと夢見ていた。それがかなえられて本当にうれしい」と、FWとしての自分史に新たなストーリーを書き加え、笑顔がはじけた。

 振り返れば、ここまでのサッカー人生は波乱万丈だった。2016年にユースからトップ昇格。その後、期限付き移籍で、J2のツエーゲン金沢、徳島ヴォルティス、J1のサガン鳥栖を渡り歩き、通算6シーズンの武者修行を終え、今季古巣に戻った。

 徳島では17ゴールを決め、J1昇格に貢献するなど、ひと回りもふた回りも成長した姿を見せている。

 有体に言えば、苦労人。だが、重ねてきた苦労を苦労のままにせず、血となり、肉となり、進化に変えた。これだけ長い期間、他クラブでプレーした選手がレンタルバックするのは、鹿島では珍しいケースでもある。

 背番号37はプロ1年目に身に着けた番号だ。初心を忘れず、何より結果で、人一倍、愛着あるクラブに尽くしたいという思いが込められている。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)

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