4月5日、2024年F1第4戦日本GPのフリー走行1回目(FP1)が行われ、2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦している岩佐歩夢がRBのマシンをドライブ。60分間のセッションで22周を走行し、16番手タイムをマークした。

 過去に岩佐は、2023年末にアブダビで行われたF1タイヤ&ヤングドライバーテストに参加し、すでにF1初ドライブは経験していたが、公式なセッションでのF1ドライブはこの日が初めてだった。

 ゼッケンナンバー『40』をつけた岩佐のマシンが収まるガレージには、HRCでエグゼクティブアドバイザーを務める佐藤琢磨の顔があった。琢磨は2019年にホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS鈴鹿/旧SRS)のプリンシパルに就いたが、岩佐歩夢は最初に送り出した卒業生でもある。

  60分のセッションが終わりヘルメットを脱いだ岩佐を、琢磨は笑顔で迎えていた。岩佐もそれに応えるようにニッコリと微笑んでいた。

 まずHRCエグゼクティブアドバイザーとして、琢磨に今回の岩佐がドライブすることになった経緯を説明してもらった。

「歩夢はスーパーライセンスを持っているし、どこかで乗せて欲しいという話はずっとチームと続けられていました」

「ここまで歩夢はシミュレーターをずっと担当していましたし、鈴鹿サーキットはホンダのお膝元です。鈴鹿をよく知っているドライバーであること、シミュレーターでの実績を積んで海外のF3、F2といったレースをして戦ってきた経緯、そのすべてをひっくるめた歩夢の評価として、彼を日本GPで使いたいとHRCに返事が戻ってきたわけです」

「これは素晴らしい話です。ちなみに僕はその決断にまったく関与はしていませんけども。この話がまとまってから歩夢には、思いっきり楽しんで走れ!と伝えました」

 そしてスクールを卒業して5年経った岩佐が、FP1を難なく走って16番手タイムの成績を残して見せた。

「今日の歩夢の走りは100点満点!素晴らしい走りでした。与えられた環境のなかでベストを尽くした良い走りだったと思います」と、教え子の晴れ舞台を評価した。

「マシンコンディションとしては、かなり燃料を積んでいたようだし、そこでタイヤとマシンの特性を掴んでいく。また(角田)裕毅のマシンには、新しいフロアのアップデートが入っていたようなので、その比較テストも入っていたと思います」

「『ランダウン』という、燃料がだんだん減ってくる状態でのマシンの比較もあったし、途中の赤旗で少し予定が狂ってしまったかもしれませんが、すごくスムーズにセッションを進めていましたね」

 目の前で見たRBのFP1のプログラムを振り返りながら、教え子である岩佐の取り組みを絶賛する琢磨。彼を教え始めたころを振り返りながら続ける。

「彼のお父さんじゃないけど(笑)、感慨深かったです。2019年にHRSを任せてもらってからずっと見ていた選手だし、ヨーロッパに行かせるプログラムがない時に、彼をきっかけとして海外のプログラムを始めることになった。4年の海外生活でしっかり英語も学んでいたし、F1のプレッシャーのかかるセッションでも、エンジニアとスムーズに進めていました」

「最初のチェックランでもペースは上げていないなかで、少しナーバスな挙動になるコーナーについての内容をきちんとエンジニアに伝えていました。操作系でもミスはなくて、チームとともにプログラム通りの仕事をこなしていました。裕毅から0.8秒遅れというのは立派なタイムですし、本人が目標に掲げていたことは全部出来たと思います」

 角田裕毅と岩佐歩夢。ひとチームでふたりの日本人ドライバーが走ったのは2006年のスーパーアグリの佐藤琢磨、山本左近以来だった。

「今日は僕より亜久里さんの方が感慨深いかもしれませんけどね(笑)。僕はどちらかと言えばHRSを卒業したドライバーが、ふたり同時にF1で走っているということに感動してました。今日のFP1の成果は歩夢にとっても大きなアピールになったはず。また我々も裕毅や歩夢に続くドライバーが出てくるように、若いドライバーたちを応援していきたいですね」