フェルナンド・アロンソが、アストンマーティンF1との契約を複数年延長。これにより、2026年からF1に正式復帰するホンダのパワーユニット(PU)を搭載したマシンのドライバーひとりがアロンソになることが確定したわけだ。

 アロンソがホンダの次期PUを搭載したマシンに乗ることについてホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、「今度は絶対に、お互い笑顔になりたい」と語った。

 日本時間の12日未明、アロンソがアストンマーティンとのドライバー契約を複数年延長することを発表した。2026年からアストンマーティンは、F1に正式復帰するホンダのPUを使うことを決めており、アロンソがそのうちの1台を走らせることになった。

 アロンソとホンダといえば、2015年から2017年のマクラーレン・ホンダ時代に共に戦った間柄。しかし当時はマシンも、PUもパフォーマンスが優れず、下位に低迷することも多かった。2015年日本GPでのアロンソの「GP2エンジン」発言は、今も多くの人の脳裏に焼き付いていることだろう。

 あれから数年が経ち、アロンソは一時F1から離れたものの復帰を果たし、印象的な活躍を見せている。一方でホンダは、2021年限りでF1撤退したものの、その後もHRCを介してレッドブルにPUを供給し続けており、今や敵なしという状況。2026年からはアストンマーティンをパートナーに、正式復帰を果たすことになっている。

 一度は袂を分かったアロンソとホンダ。その両者の歴史が、再び交わることになったのだ。

「2026年に、勝利のために、もう一度アロンソ選手と一緒に戦えるということを、心から楽しみにしています。それが、率直な感想です」

 HRCの渡辺社長は、motorsport.comのインタビューにそう答えた。

「2025年のことであれば、我々には関係のない話です。ですから、当然我々のいないところで決まると思います。でも複数年契約ということなので、ホンダとジョイントする時期に被ってきます。そのため、アストンマーティン側から、事前に私の方に話がありました」

「これまでも、ドライバーに関して意見交換をしてきました。その中、我々とアストンマーティンの間で、アロンソ選手は今のF1ドライバーの中で間違いなくトップクラスだよねという共通認識がありました。そしてチームの方からは、アロンソを契約を延長することになっても、ホンダとして特に問題ないよねという確認もしてくれていました。だから、(今回の発表が)突然ビックリするような話だったわけではありません」

「勝つためにどういうドライバーラインアップが必要なのかということは、当然議論すべきです。その中の流れで、チームが契約延長を確定させたということです」

 なおアロンソは「数ヵ月前にホンダと会った」と明かしているが、それは昨年のラスベガスGPの時だったという。渡辺社長は次のように語った。

「話しましたよ。昨年のラスベガスの時です」

「マイク・クラック代表と話していた時に彼がやってきたんです。その時は『頑張ってね』とか、『チャンスがあれば一緒にやろうね』ということを話したんです。そういう軽いひとこと、ふたこと話しただけですよ」

 前述のように、かつてアロンソとは厳しい時期を過ごしたホンダ。しかし、その時があったからこそ今のホンダがあると、渡辺社長は語る。

「2015年から2017年に彼と仕事をした時には、ホンダとしてもチームとしても、非常に厳しい状況でした。我々の歴史の中でも、特に悔しい思いをした時期でしたし、関係がギクシャクしたことも事実としてありました」

「でも、あの悔しさを乗り越えることができたからこそ、我々は強くなれました。アロンソ選手も、その後活躍していますし、我々も2021年の(レッドブルの)ドライバーズチャンピオン獲得に貢献することができました」

「辛い経験をお互いに乗り越え、もう一度アロンソ選手と、勝利に向けて一緒に戦えるということが嬉しいです。チャンピオンを目指し、一緒に勝利できることを期待しています」

 渡辺社長はアロンソについて、お互いに真剣勝負ができる、良い相手だと考えているという。

「彼はすごく覚悟を持っている人だと思いますし、その覚悟があるが故にすごくストレートにモノを言う人なんだと思います。勝負の世界なので、甘く緩くというわけには行きません。お互い真剣勝負のできる、良い相手だと思います」

「今度は絶対に、両方とも笑顔になれるようにしたいですね」