ブライトンは現地時間2月28日に行なわれたFAカップ5回戦でウォルバーハンプトン(ウルブス)に敵地で0-1の敗北。開始2分に奪われた1点を最後まで返すことができず、昨季のベスト4には及ばない結果に終わった。

 ボールポゼッションでは72%を記録し、シュート数も相手の2倍の18本(枠内は両チームとも2本)を放つなど、スタッツの大部分ではホームチームを上回ったものの、ゴール期待値はウルブスの1.32に対して0.91と、以前のように決定的な場面を多く生み出して、これを得点に結びつけることはできなかった。

 ブライトンといえば、この試合の前日会見でロベルト・デ・ゼルビ監督が、三笘薫が腰の負傷で今季絶望であることを明かし、他にも多くの主力を失っていることで悲観的なコメントを残していたが、ウルブス戦の後にも「若い選手が多い中で、このパフォーマンスを誇りに思う」と語りながらも、「9人の選手が負傷または出場停止となっており、このレベルで、ウルブスと戦うのは非常に難しい」と本音を吐露している。

 とりわけ三笘らウインガーが離脱したことで、文字通り「翼をもがれた」状態となっていることが、「シーガルズ」の攻撃力を落としており、イタリア人指揮官はこの苦境を乗り切るために、前述の通りに若手を多く起用したり、3バックを採用したりしたが、残念ながらウルブス戦では奏功しなかった。
  とはいえ、ブライトンは現有戦力で戦い続ける必要がある。そして、アメリカのスポーツ専門メディア『The Athletic』は、現在のメンバーの中で、アンス・ファティに注目している。バルセロナが伝説的な下部組織「ラ・マシア」で生み出し、1年間のレンタルでプレミアリーグに参戦した21歳は今季ここまで、公式戦18試合に出場して4得点・1アシストを記録している。

 昨年11月末にハムストリングスを負傷し、今月に入ってようやく復帰した彼は、ウルブス戦では1トップとして試合を迎え、ダニー・ウェルベック投入後は左サイドにポジションを移したが、70分に交代するまで、枠外へのシュートを1本放っただけで、チームの攻撃にほとんど影響を与えることはできなかった。

 しかし、デ・ゼルビ監督は「彼は素晴らしいとは言えないが、良いプレーをしたと思う。ピッチ上で奮闘し、良い姿勢を示した。そんな彼に対しては、何も言うことはできない」と評価。その真意は、「彼には、三笘、ソリー・マーチ、ジョアン・ペドロ(いずれも長期欠場中)、そして出場停止中のビリー・ギルモアと一緒にプレーしてほしかった」ということだ。「というのも、昨夏、私の頭の中では、ウインガーとして三笘とマーチの他、ジョアン・ペドロとウェルベック、ジョアン・ペドロとエバン・ファーガソン、あるいはファーガソンとフリオ・エンシソという組み合わせを考えていた。しかし、フリオは半年プレーできず、三笘とマーチはともに今季絶望となった。そんな状態でピッチに立つファティのパフォーマンスに、何の文句もない」

 つまり、本来は豊富な攻撃の駒がある中で、バルサの若き宝石は、あくまでもプラスアルファの効果をもたらす「贅沢なオプション」という位置づけだった。しかし、デ・ゼルビ監督の戦術を体現するはずの主力が次々に怪我に倒れたことで、否応なしにファーストチョイスに浮上することになった。ファティの戦術の浸透度などを考えれば、指揮官としてはいきなり多くは求められなかったということだろう。

 しかし、同メディアは「ブライトンが支払うファティの週給12万8000ポンド(約2400万円/本来の週給16万ポンドの2割はバルサ持ち)は、多くのチームメイトのそれをはるかに上回っており、それに見合うだけの活躍が期待されていたに違いない」と綴り、「ウルブス戦も、突然出番が回って来たわけではなく、十分に準備はできていた」と指摘した。
  また、今冬にクラブがアルゼンチンのボカから獲得したバレンティン・バルコがウルブス戦では80分に左WBで新天地デビューを果たし、惜しいクロスなど幾つか好プレーを見せたことと比較して、良いところのなかったファティには、「ヨーロッパリーグ・ラウンド・オブ16のローマ戦で挽回のチャンスが訪れる可能性はあるが、彼の出場は必ずしも保証されてはいない」と厳しい。

 バルサは財政難により、今夏の補強も厳しいことで、ファティを復帰させる方針であると見られるが、元はと言えばバルサで序列が下がったために再起を懸けてブライトンに預けられたのであり、現状のままではレンタルの意味はあまりなかったことになり、同メディアは「ファティはバルサで不確実な将来に直面している。そのため、クラブの給与体系を壊さない範囲でブライトンでのレンタル延長も考えられるが、そのためにも彼が今まで以上にここで多くの成果を上げない限り、その可能性も薄れていく」と結論付けた。

 今ひとつ振るわない状態で、図らずも残りのシーズンでブライトンの浮沈の鍵を握る存在のひとりとなってしまったファティ。クラブの目標である来季の欧州カップ戦出場に貢献できるかどうかは、あるいは彼自身のキャリアにも大きな影響を与えるのかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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