メイケイエールと池添
メイケイエールと池添

 高松宮記念がラストラン(9着)となったメイケイエール(牝6・武英)。オーナーゆかりの地である中京競馬場で、最後まで持ち味のひたむきさと一生懸命さで駆け抜けた。

 異例ともいえるGⅠ未勝利馬の引退式。雨の中、大勢の観客がスタンドに残って、最後の別れを惜しんだ。メイケイエールに絶え間なくかけられる声援で、いかにファンから愛された競走馬だったのか、改めて伝わってくる。

 管理した武英調教師は「終わったなあ、という感じですね。約4年間、本当に一瞬でしたね。大変なことばかりでしたが、よく頑張ってくれたと思います。これくらい難しい馬はそうそういないし、レースのたびに課題がたくさんあったので、いろいろ試行錯誤してやってきたので全てが思い出です。今後のことを考えずに済むので、ゲートも中心にやって悔いのないように仕上げたつもりです。パドックも良く見えましたし、4角を回る時はいいときのエールの走りでした。こういう天候で馬場に恵まれず、最後は走りにくそうにしているので怒っているのかな、と思いました」と感慨深げに振り返った。

 3歳時のスプリンターズS(4着)から主戦を務め、共に海外遠征も経験した池添は「ゲートも我慢してくれましたし、前走と違って普通に出てくれたので、ポジションを取りに行きました。いつものかかっている感じでしたが、我慢してくれました。4角を回るときはいい形だったので『これはいいんじゃないかな』と思いましたが、やはりきれいな走りをする馬ですから、こういう重たい馬場は向かなくて、欲を言えば良馬場で走らせたかったと思いました」とラストランを振り返った後、「常に追い切りやレースでも緊張感があって、安心してレースに臨むことはなかったですね。いい経験をさせてもらいました。勝つことで最後、GⅠタイトルを取って、と思っていたのでそこは残念ですが、メイケイエールの次の人生があるので、無事に終わってくれて良かったと思います」とねぎらいの言葉を掛けていた。

 GⅠタイトルの戴冠こそ果たせなかったものの、通算20戦7勝(重賞6勝)と競走馬としては立派な成績を収めたメイケイエール。一人一人の様々な想いがこめられた、割れんばかりの拍手と声援を背中に受けて、ターフを後にした。稀代の個性派アイドルホースとして、ファンの記憶に深く刻まれるだろう。

著者:東スポ競馬編集部