新谷厩舎の松田全史調教助手が徹底レポート!
新谷厩舎の松田全史調教助手が徹底レポート!

【中東制圧・インサイドレポート】
 どうも、新谷功一厩舎で調教助手をしています松田全史です。30日のGⅠドバイゴールデンシャヒーン(メイダン、ダート1200メートル)に向けてリメイクの1週前追い切りを無事に済ませ、ひと安心したところでのレポートになりますね。

 いきなり核心をいえば、今回はサウジよりもすっきりとしたシルエットにリメイクの体をつくっています。これはサウジよりも軽く、これまでのメイダンのどの瞬間よりも軽い現在の馬場状態を意識してのもので、わかりやすく表現するのなら、パワーよりもスピードを優先した体つきへの変化。腹まわりをシャープにした状態をまずはつくり、それを維持するための努力をしています。競馬場で調整ができる利点を最大限に生かし、馬場のどの部分が軽くて、どの部分が深いのか…なども毎日のように確認しながら、なによりもリメイクの状態面を最優先にして日々を過ごしているわけです。決戦の日まで残りは1週間とちょっと。まずは無事にゲートインできるよう、遠い日本から応援してください。

〝コミュ力〟生かして潜入レポート!

サウジカップを制したセニョールバスカドールの背中には…(2月22日撮影)
サウジカップを制したセニョールバスカドールの背中には…(2月22日撮影)

 ちなみに今回の連載は、懇意にしている東スポの松浪さんに頼まれて始まったものなのですが、出発の直前に「今回はリメイクだけでなく、それ以外の部分にも目を向けてレポートを頼むわ」と半ばパワハラ的な指示を追加されました。マジで? そんなんオレの仕事とちゃうやん!と思いながらも頼まれたら断れないお人よしの僕。この数週間は持ち前の〝コミュ力〟を生かし、ドバイミーティングに出走する外国馬のスタッフに接近する運びとなりました。でもね、簡単な仕事のように思われるでしょうけど、それが意外と簡単でないわけですよ。誰もがフレンドリーな印象の外国人も実際は十人十色の性格。おしゃべりもいれば、無口な陰キャもいます。よく知らない相手にも急接近して、ズカズカと話を聞く新聞記者のメンタル。あれ、ちょっと見習いたいわ。

 そんなことを思いながらも声を掛け続け、いつの間にやら仲良くなったメキシコ人。見た目はほとんどゴリラでも、話してみるとすごく丁寧でいろいろなことを教えてくれるマジでいいヤツです。人は見かけで判断しちゃダメですね。そんなゴリが乗っている馬がサウジカップでウシュバテソーロを負かしたセニョールバスカドール。ね? 僕って仕事が早くて的確でしょう(笑い)。

 ゴリに前走の話を聞けば、「サウジはラッキーだった。展開がハマった気がする」と正直な反応。でも、僕はそこに「馬場もね」のひと言を付け加えたいですね。ハイペースだけでなく、しっかりと掻(か)き込める馬場があったからこその追い込み決着。サウジカップはもちろん、リメイクが勝ったリヤドダートスプリントの結果さえも、ドバイのレースにスライドしてはいけないと思っているくらいですから。ちなみにゴリはサウジでリメイクの3着だったボールドジャーニーにも乗っていて、「前回よりも良さそう」と言っているのですが、僕はドバイの馬場を走るには少し太い気がする。見た目にパワー型のつくり。これではドバイのスピードに対応できないのではないかな、と。このあたりの判断までを頭に入れながら、レースを見ると面白さがさらに増すと思いますよ!

「俺はマインドユアビスケッツに乗っていた」

 続いてはサウジカップで3着だったサウジクラウン。この馬は牝馬みたいな性格ですね。いつでもピリピリしていて神経質な印象。体つきも細く見えます。でも、今回の馬場ではこちらのほうがいいのかもしれません。前回のサウジは実際よりも長めの距離適性が必要な馬場でしたが、今回は全くの逆。リメイクもこちらに合わせる形で馬をつくっているわけですけど、サウジクラウンは米国馬には珍しいパワフルさがなく、日本馬に近い感じのスピードタイプ。距離も1800メートルまででしょうね。なので、ゴドルフィンマイルに向かうとの報道が出ているのでしょうが、この馬場の特徴を知ってから選択できるのであれば、僕ならワールドカップを使います。この部分、スクショして保存しておいてください(笑い)。ちなみに同馬を担当しているメキシコ人は英語がそこまで上手でないこともあり、言葉の少ないシャイボーイです。

 最後にちょっと気になる情報を。やせ細ったニンジンみたいなヤツが乗っている栗毛のでっかい馬。検疫厩舎にいるのでドバイの馬ではないと思うのですけど、これがスピードのありそうな馬なんですよ! ニンジンに話を聞くと、「俺はマインドユアビスケッツに乗っていたことがあるんだ。今度はコイツとワールドカップに行くんだぜ」。マジ? 名前も知らん馬やけど。そのうちドバイの特殊ゼッケンをつけると思うので、これは来週までの宿題にしておきます。さすがにウソは言われていないと思うので、続報を期待していてください(笑い)。(新谷厩舎・調教助手)

☆松田全史(まつだ・まさふみ)栗東・新谷功一厩舎所属の調教助手。森秀行厩舎所属時はアグネスワールド、エアシャカール、エアトゥーレで多くの海外遠征を経験。角居厩舎所属時にもヴィクトワールピサのフランス、ドバイ遠征に帯同し、2011年にはドバイワールドカップ優勝も経験している。趣味はゴルフ。

著者:松浪 大樹